PR

キャリア 身近な科学

【素材メーカー勤務が語る】化学と素材の違い

2020-10-18

某企業のCMで「素材」という分類をよく聞くようになってきました。似た分類に「化学」がありますが、何が違うのでしょうか。明確な定義があるわけではありませんが、曖昧で混同されがちな「素材」「化学」について僕が考える違いを紹介します。

1. 化学メーカーとは

化学メーカーとは「化学反応」を含む生産プロセスで製造する会社を指しています。特に石油精製で得られる基礎化学品を出発原料とする材料を「化学」と呼ぶことが多いですね。

言われると思い出すのが「総合化学」「誘導品メーカー」「電子材料メーカー」という分類です。明確な定義があるわけではありません。

総合化学メーカーは、エチレンなど最も上流の基礎化学品から下流の各種製品まで製造している会社を指すことが多いです。誘導品メーカーでは、外部から購入した基礎化学品から化学反応を伴い誘導体を製造する企業を言います。電子材料メーカーでは、毀損原料や誘導品などを購入して混ぜ合わせて下流製品を製造するメーカーですね。

総合化学メーカー7社についての比較に興味のある方はこちらもどうぞ。

【総合化学7社徹底比較】復活の東ソーor堅実な信越化学

【2022年3月期版】日系化学メーカー大手の長期推移を様々な指標で比較してみました。日本株ではBtoBビジネスの地味な製造業である化学メーカ。景気動向を受けやすく浮き沈みが激しい業界の中でも、投資対象 ...

続きを見る

企業分析

2023/2/26

【総合化学7社徹底比較】復活の東ソーor堅実な信越化学

【2022年3月期版】日系化学メーカー大手の長期推移を様々な指標で比較してみました。日本株ではBtoBビジネスの地味な製造業である化学メーカ。景気動向を受けやすく浮き沈みが激しい業界の中でも、投資対象としては財閥系よりも魅力的な企業が2社もあります。 その2社とは見事な復活を遂げた東ソー、堅実経営の信越化学。株価、キャッシュフロー、財務状況から、総合化学大手7社を投資対象として比較してみました。投資対象としてはもちろん、転職を考えている人にとってもしっかり確認したい内容となっています。 1. 総合化学株の ...

ReadMore

企業分析

2023/3/30

【大手5社徹底比較】繊維メーカーで投資なら東レ、高給なら帝人

繊維メーカー国内大手5社(東レ、帝人、東洋紡、クラボウ、ユニチカ)の15年間推移を、素材業界所属の材料開発エンジニアが徹底比較します。 業界的に苦しい展開の繊維メーカーですが、東レは一人勝ち状態。投資先としても最も有望です。一方最も高給なのは業界2位の帝人ですが、持続性はあるのでしょうか。 歴史は繰り返されるという考え方から、本記事ではリーマンショック前後を含む過去15年間の推移での比較としました。株式投資を検討されている方だけでなく、就職や転職を考えている方もどうぞ。 1. 繊維メーカーとは 繊維メーカ ...

ReadMore

2. 素材メーカーとは

素材メーカーとは、商品のもとになる「材料」を製造・供給している会社を指します。化学メーカーでは基礎化学品を出発原料として材料を製造しているのに対し、素材メーカーは出発原料が基礎化学品に限らない点が異なります。

上場企業の業種分類でいうと、繊維、パルプ・紙、化学、石油・石炭、ゴム、ガラス・土器、鉄鋼、非鉄金属、金属製品の9業種が「素材メーカー」と言えます。化学を含む材料一般という事ですね。本記事ではこの9業種を「素材」の分類とします。

素材メーカーの内訳を示す図。繊維、パルプ・紙、化学、石油・石炭、ゴム、ガラス・土器、鉄鋼、非鉄金属、金属製品の包含関係を示す。
素材メーカーの内訳

業種分類上は完全に分かれていますが、実際は各会社とも重なる領域もあります。有機材料と無機材料の重なりは少ないですが、有機材料と無機材料の中ではそれぞれ重なる領域も多いです。

比較的素材の存在感がない金属製品を除く8業種について、代表的大手素材メーカーを比較してみた記事はこちら。

企業分析

2023/3/1

【大手8社徹底比較】素材メーカーの勝ち組は富士フイルムと王子HD

縁の下の力持ち的存在の素材メーカー。意外と裾野が広いのですが、素材の中でも明暗の分かれる業界です。 本記事では素材を「有機素材」「無機素材」に分けて国内大手8社を徹底比較しました。歴史は繰り返させるという考え方から、本記事ではリーマンショック前後を含む過去15年間の推移も載せてあります。就職や転職を考えている方にも参考になると思います。 1. 素材メーカーとは 素材メーカーとは、化学、石油、繊維、ゴム、パルプ・紙、鉄鋼、非鉄金属、ガラス・土石の8業種を指します。素材メーカーとはそもそも何ぞやという事に関し ...

ReadMore

企業分析

2023/2/17

【8社徹底比較】非鉄大手なら住友金属鉱山一択も、業界の先行きは暗い

非鉄メーカー国内大手8社を徹底比較しました。住友金属鉱山、東邦亜鉛、DOWAホールディングス、JX金属(ENEOS傘下)、日鉄鉱業、古河機械金属、三井金属鉱業、三菱マテリアルの8社の中でも、住友金属鉱山がダントツトップ。売上高トップの三菱マテリアルは低迷している様相。 素材メーカーの中でも資源権益も絡んでいて比較的羽振りの良い非鉄メーカーですが、必ずしも売上規模と関連していないのも興味深いところ。IR情報15年間推移を、素材業界所属の材料開発エンジニアが徹底比較します。 歴史は繰り返されるという考え方から ...

ReadMore

3. 化学メーカーと素材メーカーの違い

3-1. 【違い①】時価総額

東証1部上場素材株(繊維、パルプ・紙、化学、石油・石炭、ゴム、ガラス・土器、鉄鋼、非鉄金属、金属製品)の時価総額(2020年)
2020年3月末時点の素材株時価総額

東証1部の素材メーカーの時価総額です。東証1部全体で530兆円に対して、製造業は275兆円、その中で素材メーカー9業種は61兆円です。

素材メーカーの時価総額61兆円のうち、化学メーカーで約6割強の39兆円を占めます。なので、素材メーカーの中で化学メーカーの存在感が大きいのは事実です。

2020年3月末時価総額ベースでは、製造業が東証1部全体に対して52%、素材メーカーは東証1部全体に対して12%となっています。こうしてみると素材はやはり地味ですね。

3-2. 【違い②】会社数

東証1部全体で2165社に対して、製造業は917社、素材メーカー9業種は348社あります。このうち4割強の146社が化学メーカーです。

時価総額では6割を占めているのに、会社数では4割しか占めていません。つまり化学メーカーは素材メーカーの中でも1社当たりのインパクトが大きいという事になります。こうしてみると、化学メーカー以外の素材メーカーはちょっと地味な存在なのかもしれません。

4.【まとめ】「化学」は「素材」の中で存在感のある業種

混同されやすい化学メーカーと素材メーカーですが、関係性をまとめます。

  • 化学は素材の一部。
  • 素材メーカーのうち、化学メーカーは時価総額ベースで6割、会社数べースで4割を占める。
  • 東証1部時価総額では素材メーカー9業種は時価総額の12%、化学メーカーに限定すると7%。

日本の産業の中では比較的地味な存在ですが、縁の下の力持ち的な立ち位置の産業ですね。地味ですが世界的には日本のプレゼンスが残っている希少な産業なので、盛り上がってほしいところですね。

企業分析

2023/2/18

【5大商社比較】総合商社なら伊藤忠がダントツ

【2021年3月期版】投資対象としてはダントツで伊藤忠商事が魅力的です。最高益を更新し続けていて、名実とも元業界トップ三菱商事を追い抜きました。 そんな伊藤忠商事を含め、日本株では高配当株として知られる商社株。総合商社について、株価、キャッシュフロー、財務状況から投資対象としての比較をしてみます。伊藤忠ならではの強みを見ていきましょう。投資家だけでなく就活性や転職活動中の方にも参考になれば幸いです。 1. 総合商社株の4つの魅力 総合商社は事業投資を生業とし、少数精鋭でエリートが揃うイメージのある総合商社 ...

企業分析

2023/2/17

【製薬大手5社徹底比較】国内大手ならタケダよりアステラス

【2020年3月期版】製薬会社はCMでも馴染みのある人が多い企業群ですね。医薬品は人の生死にかかわるので景気動向を受けにくくい業界ですが、個別株だと明暗がはっきりしています。 国内大手の勝ち組はアステラス製薬、次点で大塚HDでしょう。株価、キャッシュフロー、財務状況から、製薬国内大手5社と米国株の大手ジョンソン&ジョンソン(JNJ)の計6社を投資対象として比較してみました。就職や転職を考えている方にも参考になると思います。 1. 製薬株の2つの魅力 製薬株の魅力は次の2つです。 製薬業界は人の健康 ...

企業分析

2023/2/26

【重工メーカー比較】国内大手4社なら住友重工

【2022年3月期決算版】日本株ではBtoBビジネスの中でもビッグスケールの製造業である重機メーカー。日経平均よりは穏やかで比較的景気動向を受けにくい業界の中でも、投資対象としての魅力は規模に比例しません。 国内大手4社の三菱重工、IHI、川崎重工、住友重工の中では住友重工が最も魅力的です。株価、キャッシュフロー、財務状況から、総合重機国内大手4社と独シーメンス1社の計5社を投資対象として比較してみました。特にリーマンショック前後の推移もわかるよう、15年間での推移を比較してあります。 投資対象としてはも ...

企業分析

2023/2/26

【大手5社徹底比較】電子部品ならムラタor日本電産

【2022年3月期版】直接的には馴染みがないけれど、意外と身近な製品に使われる電子部品メーカー。スマートフォンの普及とともに大きな恩恵を受けている業界ですが、個別株だと明暗がはっきりしています。 国内大手の勝ち組は村田製作所と日本電産。株価、キャッシュフロー、財務状況から、国内大手5社を投資対象として比較してみました。歴史は繰り返させるという考え方から、本記事ではリーマンショック前後を含む過去15年間の推移も載せてあります。就職や転職を考えている方にも参考になると思います。 1. 電子部品メーカー株の3つ ...

企業分析

2023/2/18

【総合電機大手7社徹底比較】圧勝の三菱電機、苦境続きのパナソニック

国内大手8社(パナソニック、日立製作所、SONY、三菱電機、東芝、シャープ、富士通、NEC)の中から実質SIer(システムインテグレーター)になった富士通とNECを除き、事務機器トップのCANONを独断で加えた7社について、株価、売上高、従業員数、年収、財務状況について推移を比較してみました。 電機業界は売上げこそ突出していないが高利益率を確保し続けている三菱電機が圧勝、売上2位のパナソニックは苦しい展開です。日立、SONYも苦境を抜けつつありますが、まだまだ安心はできません。 歴史は繰り返すという考え方 ...

企業分析

2023/2/17

【8社徹底比較】非鉄大手なら住友金属鉱山一択も、業界の先行きは暗い

非鉄メーカー国内大手8社を徹底比較しました。住友金属鉱山、東邦亜鉛、DOWAホールディングス、JX金属(ENEOS傘下)、日鉄鉱業、古河機械金属、三井金属鉱業、三菱マテリアルの8社の中でも、住友金属鉱山がダントツトップ。売上高トップの三菱マテリアルは低迷している様相。 素材メーカーの中でも資源権益も絡んでいて比較的羽振りの良い非鉄メーカーですが、必ずしも売上規模と関連していないのも興味深いところ。IR情報15年間推移を、素材業界所属の材料開発エンジニアが徹底比較します。 歴史は繰り返されるという考え方から ...

素材メーカーは僻地勤務が多いと言われます。しかし実際に僻地勤務を経験してみると、意外といいことが多いということに気づきます。

キャリア

2023/2/18

【大手メーカー】僻地勤務のすすめ

大手メーカーで多くの人が経験する僻地勤務。僻地勤務といえば一般的には良いイメージを持たない人も多いことでしょう。 しかし僻地勤務も悪いことばかりではありません。地方都市・僻地・都会すべてで勤務経験のある筆者だからこそ感じる、僻地勤務のメリット・デメリットについて解説します。 1.僻地勤務とは 僻地勤務とは、都会の喧騒から離れ、地方都市からも遠い片田舎で仕事することをいう俗語です。 生まれ育った地元以外の地方で、かつ交通の便が著しく悪い勤務地を想像していただければよいでしょう。twitterでも僻地勤務と言 ...

ReadMore

キャリア

2023/2/17

【実体験・データ付】地方勤務の実情【子育て世帯にお勧め】

就職や転職で悩みがつきない勤務地問題。製造業・素材エンジニアとして地方勤務、僻地勤務、都会勤務を全て経験した筆者の立場で、地方勤務について綴ってみます。 1. 地方勤務とは 一口に地方勤務と言っても、人によって想像する状況は様々です。勤務地にまつわる言葉として、都会勤務・地方勤務・田舎勤務・僻地勤務があります。諸説ありますが、本記事ではこの4つをMECE(漏れなくダブりなく)の概念という前提とします。この場合、都会度が高い順に都会勤務>地方勤務>田舎勤務>僻地勤務となります。 どの言葉も明確な定義があるわ ...

ReadMore

  • この記事を書いた人

素材さん

東大卒を活かせてない経歴の社畜。工場勤務のヒントを綴ります。転職、結婚、資産形成、資格取得、仕事感。共通点ある方のヒントになれば幸いです。 転職1回目で僻地突入、転職2回目で僻地脱出。/30代前半/東大卒(学部・院)→中小→大手JTC→超大手JTC/素材開発エンジニア/既婚/3人兄弟の真ん中

-キャリア, 身近な科学