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企業分析

【重工メーカー比較】国内大手4社なら住友重工

2020-05-04

【2022年3月期決算版】日本株ではBtoBビジネスの中でもビッグスケールの製造業である重機メーカー。日経平均よりは穏やかで比較的景気動向を受けにくい業界の中でも、投資対象としての魅力は規模に比例しません。

国内大手4社の三菱重工、IHI、川崎重工、住友重工の中では住友重工が最も魅力的です。株価、キャッシュフロー、財務状況から、総合重機国内大手4社と独シーメンス1社の計5社を投資対象として比較してみました。特にリーマンショック前後の推移もわかるよう、15年間での推移を比較してあります。

投資対象としてはもちろん、就職や転職を考えている人にとってもしっかり確認したい内容となっています。

1. 総合重機メーカーとは

航空機エンジンの写真

総合重機と言ってもなかなかイメージしにくいですよね。

発電プラントなどパワー事業、大型の産業機械・社会基盤事業、ロケットや航空エンジンなどの航空宇宙事業を扱っている重工メーカーを言います。

総合重機株は国防基幹機能を背負っていることもあり、実際には潰れる可能性が低いのは大きな魅力でしょう。日本の重工機能を背負った、社会的存在意義の大きい企業群ですね。

2. 総合重機国内大手4社+シーメンスを徹底比較

総合重機株といっても様々ありますが、ここでは造船会社を除いた国内大手4社「総合重機」の大手4社を上げて比較してみました。

定義はまちまちですが、重工大手3社である三菱重工、IHI、川崎重工に加えて、住友重機械工業を加えた4社としました。また海外企業との比較のため一部独シーメンスとの比較も入れています。同じく海外重機メーカーの巨人GEは色々問題があって比較対象として適切でないので除外しています。

ただ企業分析を進めてみると、国内の重工業界自体が投資対象として上級者向きであることがわかりました。有名どころが必ずしも投資対象として優良とは限らないようです。

ちなみに僕が転職するときには、株価以外の部分は財務体質を含めてしっかりチェックしていました。新卒でここまで比較するのはちょっと厳しい気もしますが、中途採用で応募するなら応募先の企業はしっかり分析しておきたいところです。

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ただし財務体質と待遇は別問題という点は留意しておきましょう。高待遇であるがゆえに財務体質改善が進まないケースも想定されるからです。

2-1.【比較①】株価推移:日経平均より下、不景気にも弱い

総合重機5社(三菱重工、IHI、川崎重工、住友重機械工業、シーメンス)の株価を比べてみます。リーマンショック後の底値である2009年2月を100としたときの指数で表しました。不景気時の動向が見えることが重要と考え、リーマンショック前後の変化が見えるようにあえて10年以上の期間で変化を確認しています。

2005年から2023年までの総合重機5社(三菱重工、IHI、川崎重工、住友重機械工業、シーメンス)の株価推移
2005年から2020年までの総合重機5社(三菱重工、IHI、川崎重工、住友重機械工業、シーメンス)の株価推移

ベンチマークとして日経225平均も入れてあります。シーメンスのみユーロ建てです。

総合重機メーカーは独シーメンスを含めて全て日経平均をアンダーパフォームしています。特に天下の三菱重工は悲惨な値動きです。シーメンスだけはリーマンショックのタイムラグがあるのも面白いですね。

IHI,、川崎重工、住友重工はリーマンショック後の値戻りは日経平均よりも良かったのですが、2015年のチャイナショックで差を埋められて2019年に追い抜かれてしまいました。コロナショック後は航空機関連でのマイナス要素で随分出遅れましたね。

特にアベノミクス相場で値上がりが続いた中で後れを取っていたので、よほど業界特有の事情が分かる人以外は不安で継続保有が難しいと想像できます。僕なら投げ売る自信しかありません。

本比較では、日経平均>シーメンス>住友重工≒IHI>川崎重工>三菱重工の順序になります。業界全体として市場評価はイマイチなようです。

2-2.【比較②】事業ポートフォリオ

各社の事業ポートフォリオを見てみましょう。三菱重工のセグメント分けに従ってグラフ化してみました。各社でセグメント構成を頻繁に行っており2017-2019年くらいしかまともに比較できず、推移が見れないのはちょっと残念。

発電関連や再生エネルギーなどのパワー事業、電車・造船やクレーン等の重機、インフラ関連の産業機械&社会基盤、ロケットや航空機エンジンなどの航空・防衛・宇宙事業ですね。

総合重機5社(三菱重工、IHI、川崎重工、住友重機械工業、シーメンス)の株事業ポートフォリオと営業利益率の比較(2017円度から2019年度まで)
各社決算発表資料から素材さん作成

国内では「天下」の三菱重工はパワー事業が強いです。2014年に日立と事業統合して競争力強化されたんでしょうか。それでも5%程度で、シーメンスの営業利益率は背中すら見えてませんね。パワー部門と産業機械&社会基盤部門で稼いだなけなしのキャッシュをMRJにブッコミ続けていることがよくわかります。

航空・宇宙事業はIHIの得意分野で、特に航空エンジンが稼ぎ頭になっています。パワー事業は不振ですね。宿敵の日立と合弁を組んだ三菱重工のように、競争力がないと諦めて他社と仲良くすればいいのにと思ってしまいます。合弁先として魅力がなく放置されているだけなのかもしれませんが。

住友重工は航空・宇宙関連事業はないものの、パワー関連、産業機械&社会基盤でともに安定して7~8%の営業利益率。住友の名に負けない安定感がありますね。

ちなみに縦軸を売上高に変えるとシーメンスの圧倒的存在感が分かります。同時に相対的には小ぶりでも健闘している住友重工の姿が見えてきます。なおシーメンスは2020年の再生エネルギー以外のエナジー事業スピンオフを念頭にセグメント分けが変わり比較できなくなってしまいました。このため2019年度分はグラフ化していません。

総合重機5社(三菱重工、IHI、川崎重工、住友重機械工業、シーメンス)の株売上高の比較

2-3.【比較③】自己資本比率の推移

重要な財務指標の1つ、自己資本比率を確認します。財務状況の健全性を見る指標の一つで、全体資産のうち返済不要の自己資本の割合を示したものです。

この値が高いほど財務が健全で堅実経営であることを示します。逆に低い場合にはたくさん借金をしてレバレッジの高いチャレンジングな経営をしていると言えます。

三菱重工、IHI、川崎重工、住友重工、シーメンスとも、リーマンショックを挟んだ2005年度以降の推移を比較しました。

2005年から2023年までの総合重機5社(三菱重工、IHI、川崎重工、住友重機械工業、シーメンス)の自己資本比率の推移
各社有価証券報告書から素材さん作成

レバレッジを大きく利かせた総合商社とは異なり、製造業は設備資本も多いのでリーマンショックでも意外と激動にはなっていません。独の巨人シーメンス社も30%前後業界としてそれほど高くありません。重工は投資も大型になりがちで財務体質は全体的に低い傾向です。重工業界はリスクも大きいので相応のレバレッジが必要なのかもしれません。

そんな住友重工はリーマンショック中も含めて、2006年以降一貫して肩上がりで急速に財務基盤が強化されています。商社や化学と異なって、重機では堅実な住友系のいい面が出ています。

重工の国内最大手、三菱重工は良くも悪くも安定的に30%でしたが、じりじり右肩下がりになっているのは少し気になる所です。造船や航空機関連での事業不振が影響してそうです。

2-4.【比較④】連結売上高の推移

各社とも緩やかな右肩上がり傾向ですね。唯一三菱重工は2014年度に大きく連結売上高が増加していますが、2014年2月の日立製作所の発電事業との統合による効果ですね。火力発電事業はGEなどの海外大手でも苦戦していて、早々に大手同士で統合したのは勇気ある決断だったのではないでしょうか。

  • 重工大手4社+シーメンスの連結売上高ついて、2009年を100とした時の2005年度から2021年度までの推移比較を示した図
  • 重工大手4社の連結売上高ついて2005年度から2021年度までの推移比較を示した図

2-5.【比較⑤】連結従業員1人あたり営業利益の推移

連結従業員1人あたりの営業利益推移も確認しましょう。

トップの住友重工は10年前と比較して半分になっていますが、それでも業界トップとなっています。不足感のあった従業員を確保しながら、売上を伸ばしてきた影響でしょう。三菱重工は万年厳しい状況が続いています。それでも2000年代後半の窮地は脱しつつあるようです。

IHIと川崎重工は浮き沈みが激しく、景気動向を受けやすい稼ぎ頭の航空事業の影響でしょうか。重厚長大と言いながらもやや安定感に欠けると言ってよいでしょう。

2005年度から2021年度までの総合重機4社(三菱重工、IHI、川崎重工、住友重機械工業)の連結従業員1人あたり営業利益推移の比較
各社有価証券報告書から素材さん作成

重工業界は他の産業と比較するとやや苦しい展開ですが、住友重工は他産業と比較しても遜色ない水準でしょう。

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2-6.【比較⑥】平均年収の推移

次は気になる平均年収の推移を比較します。有価証券報告書に記載された平均年収について2005年度から2021年度までの推移を見てみましょう。重厚長大産業ということもあり、急激な変化はないと思いきや意外と凹凸が激しいことが分かります。

MRJで苦戦している三菱重工は意外と右肩上がりで高給、住友重工が高位安定なのが目立ちます。川崎重工は品質問題にも苦しめられて伸び悩んでいる様子ですね。IHIは好調の航空機事業に支えられて直近3年くらいは上がっていますが、暫くは厳しい展開が続きそうです。

重工大手4社の平均年収について2005年度から2021年度までの平均年収の推移比較を示した図
各社有価証券報告書から素材さん作成

有価証券報告書では諸事情により実態よりも高く見せることも低く見せることもできます。あくまで景気動向や利益水準との相関を確認する程度にとどめるべきです。実際の年収動向は、就職四季報を参考にしましょう。過去3年分が掲載されています。

3. 総合重機5社の詳細(配当とキャッシュフローなど)

3-1. リーマン以降は順調な住友重工

1株当たり利益と配当、配当性向を確認します。リーマンショックの逆風で痛手を受けた重工業界において、住友重工も例外ではありません。しかし2009年-2010年も赤字を出さずに乗り切り、一株益(EPS)は2019年にリーマンショック前を超えてきました。

財務体質改善と並行していることもあり致し方ないのかもしれませんが、配当性向は日系企業の30%弱で張り付いているのが歯痒いですね。

資家目線ではちょっと心もとないものの、無茶な配当掃出しはしない方針なのでしょう。コロナショックでそこまで大打撃は受けていませんが、少し減配してしまいました。配当政策は純日本企業らしいですね。それでも株価はコロナ騒動でもリーマンショック底値を上回っています。この業界では十分健闘しているといえそうです。

住友重機械工業の2006年から2022年までのEPS、1株配当、配当性向の推移
住友重機械工業HP掲載の有価証券報告書から素材さん作成

キャッシュフローを確認します。営業CFは文字通り本業の事業活動での収支を表し、健全な企業はプラスを維持しています。営業CFのマイナスが続くようであればビジネスモデルの崩壊が起こっていると考えてよいでしょう。

投資CFは設備投資やM&Aなどでの収支を指します。次なる成長のためにある程度投資は必要なので、ふつうは営業CFの絶対値よりもすこし小さいマイナスです。無謀な買収をしたり過剰投資をするとマイナスの額が大きく、逆に資金繰りに困って資産投げ売りをすればプラスになります。

フリーCFは営業CFと投資CFの合算で、会社の自由に使えるキャッシュです。これが配当や自社株買い、債務返済、内部留保の原資になります。

営業CFは凹凸が激しくなっていますが、営業利益率は5%以上をキープし10%に迫る勢いです。この後紹介しますが、国内大手と比較すれば上々、ドイツの巨人シーメンスと比較しても営業利益率では見劣りしません。泥船に深入りせず半導体向けロボットや建設機械など、マージンがとれて自社の強みが活かせるところで手堅く稼いでいます。

住友重機械工業の2005年から2022年までの営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、営業利益率の推移
住友重機械工業HP掲載の有価証券報告書から素材さん作成

直近でも投資が増えており、財務体質改善しながら投資もしっかりやって1株益増加させながら投資も積極的に進められていますね。2018年には伊ラファ―ト社を220億円で買収し、成長産業であるロボット需要を見越した産業用モーター事業を傘下に収めています。

重工業界では比較的手厚い自己資本を元に、変減速機や射出成形機などの成⻑・⾼収益分野に対して重点的な設備投資、医療・⾃動⾞・半導体関連分野への開発投資も大きく進めています。足元の投資加速の中でコロナ騒動勃発は痛いところです。いったん暗黒の時代を迎えそうですが、その後の復活には期待したいところです。

3-2.ドイツの巨人シーメンスは手厚い株主還元が特徴

では住友重工以外の国内大手3社を見る前に、海外の巨人シーメンスを見てみましょう。

シーメンスは今回比較対象の総合重機メーカーの中で、リーマンショック時に唯一減配していません。さすがに利益は落ちて2008年の配当性向は100%に迫っていましたが、配当性向40~60%と高水準を保ちながらも着実に利益と配当を上積みしてきました。

2012年と2016年には大型自社株買いで7%の発行済み株式を減らしています。発行済み株式が減ると当然1株当たりの利益が濃縮されます。増配だけでごまかすことなく、自社株買いでの株主還元も合わせ技で株主還元する姿勢も一流ですね。(図はSiemens_HP掲載のAnnual reportから素材さん作成)

  • シーメンスの2005年から2022年までのEPS、1株配当、配当性向の推移
  • シーメンスの2005年から2022年までの営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、営業利益率の推移

営業利益率はコンスタントに7~8%で安定しています。こう見ると売上高ではシーメンスの10%にも及ばない住友重工が、営業利益率で同水準に迫るのは健闘していると言えます。

3-3. 国内最大手の三菱重工はイマイチ

三菱重工は国内は色んな意味で迷走気味です。増益と現役を繰り返しています。2011年以降は減配しないよう頑張っている涙ぐましい姿勢が見えるのは、やっと本当の意味でグローバル企業を意識し始めた証拠なのでしょうか。

営業CFは凹凸の中でも増加傾向にあるのは予想外でしたが、営業利益率も低迷しています。2014年には低利益率の発電プラント事業を65%出資で日立製作所と合弁化したのは良かったのですが、造船で多額の損失を生むなど組織としてまだまだ構造的問題がありそうです。(図は三菱重工HP掲載の有価証券報告書から素材さん作成)

  • 三菱重工業の2005年から2022年までのEPS、1株配当、配当性向の推移
  • 三菱重工業の2005年から2022年までの営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、営業利益率の推移

さらに鳴り物入りで2008年から開発が始まったMRJという爆弾を抱えていました。MRJ事業だけで2017年、2018年、2019年とそれぞれ1189億円、851億円、2633億円の営業損失を出しています。2018年度(2019年3月期)から導入されたIFRSの影響で大きくなった減損リスクが早速顕在化した形ですね。ハイリスクで500億円の政府補助金を受けた準国策事業とはいえ、2019年度には4964億円の特別損失計上、さらには2020年の開発凍結を経て2023年の開発中止とあまりにも悲惨でした。MRJ開発中止は日本人としては残念ですが、一企業会計としては膿出しがやっとひと段落したともいえそうです。

株価だって重工業界の中でもぶっちぎりの一人負けでしたよね。ただし実際にはMRJの損失で騒がれていた2017年以降もキャッシュフローはそこまで悪くなかったので、世間で騒がれているほど悪くはないという実情も見え隠れします。発電関連やターボチャージャー・エンジニアリング関連ではしっかりキャッシュが稼げる体制にはなっているのでしょう。

3-4. 迷走気味のIHI

航空・宇宙事業が絶好調なIHI。1株益(EPS)は激しい上下を繰り返していますね。

2006年度の中間決算と期末決算で有価証券報告書に虚偽記載し、第三者割当増資で約640億円、社債発行で300億円を調達した黒歴史を持つIHI。その反動と景気減速でリーマンショック時には営業赤字に加え営業CFまで赤字になっています。

長期で見た営業CFと投資CFがトントンにしか見えないのは目の錯覚でしょうか。2016年度はボイラー材料間違いなど、重過失により大規模追加工事発生で多額の損失を生み2016年の減配に続き2017年には無配転落。ベースの技術力はあるのでしょうが品証があまり強くなかったりと、経営があまり上手でないのかもしれません。(図はIHIのHP掲載の有価証券報告書から素材さん作成)

  • IHIの2005年から2022年までのEPS、1株配当、配当性向IHI
  • の2005年から2022年までの営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、営業利益率の推移

そういえば財務体質も万年最下位が定着していましたね。業界一好調航空機エンジンの事業も、コロナ問題での航空業界の暗雲に飲み込まれそうで運を引き寄せる経営センスの悪さが全面にでしまっています。造船事業の悪化も追い打ちを掛けそうな勢いですね。

景気減速が見えかくれする中で、高値の2019年11月に慣れない自社株買いを発表してすぐさま一括で実施してしまっています。高値で自社株買いをしてしまう悪しき日本経営のセンスが滲み出てますね。

財務体質改善よりも自社株買い優先を全否定するわけではありませんが、決議だけやっておいてリスク分散でちょっとずつ買えばいいのにと個人投資家の端くれとして思ってしまいました。水増し決算に続く増資の黒歴史に慣れてしまったのか、妙な度胸が経営陣にはあるようです。収益向上にはプラント事業売却が先のような気もしますが、大ナタを下せないところも含めて良くも悪くも日系企業なのでしょう。

コロナショックで稼ぎ頭の航空機事業が大コケしてしまい営業CFも大幅減。帰休などで出血を抑えてなんとか乗り切ったのでしょうか。2021年度は反動も見られますが、中長期ではどうなることでしょうか。今後数年間の動向が気になるところですが、筆者は長い冬の時代を迎えると予想します。

3-5. 品質問題で揺れる川崎重工

川崎重工と言えば2018年に新幹線の品質問題で大きな波紋を呼んだのは記憶に新しいですね。それでもIHIを見た後だとEPS推移やCF推移がまともに見えてしまうのが不思議なところです。リーマン後に加えて2017年にも配当に手を付けてしまっています。

品質問題を織り込んでも赤字決算まではたどり着かず、IHIほどではないにせよ航空システムでうまく儲けているようです。2020年度のコロナショックで航空機関連は撃沈し営業CFは赤字転落、IHI同様かなり苦しい展開でした。半導体ロボットや建機なども利益率がよく、こちらは住友重工とも重なる所がありますね。(図は川崎重工HPの有価証券報告書から素材さん作成)

  • 川崎重工の2005年から2022年までのEPS、1株配当、配当性向の推移
  • 川崎重工の2005年から2022年までの営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、営業利益率の推移

企業規模や財務体質を考えると規模に見合った投資CFですが、営業CFが2016年以降低空飛行しているのも品質問題の前兆だったのでしょうか。コロナショック影響を考慮しても、営業CFは低空飛行が安定化してきました。品質問題が再拡大する負のループに入らないといいのですが。2021年度は反動も見られますが、今後数年間の動向が気になるところです。

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素材さん

東大卒を活かせてない経歴の社畜。工場勤務のヒントを綴ります。転職、結婚、資産形成、資格取得、仕事感。共通点ある方のヒントになれば幸いです。 転職1回目で僻地突入、転職2回目で僻地脱出。/30代前半/東大卒(学部・院)→中小→大手JTC→超大手JTC/素材開発エンジニア/既婚/3人兄弟の真ん中

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