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企業分析 株式投資

総合重機株は国内大手4社なら住友重工

2020-05-04

日本株ではBtoBビジネスの中でもビッグスケールの製造業である重機メーカー。日経平均よりは穏やかで比較的景気動向を受けにくい業界の中でも、投資対象としての魅力は規模に比例しません。

国内大手4社の三菱重工、IHI、川崎重工、住友重工の中では住友重工が最も魅力的です。株価、キャッシュフロー、財務状況から、総合重機国内大手4社と独シーメンス1社の計5社を投資対象として比較してみました。

投資対象としてはもちろん、就職や転職を考えている人にとってもしっかり確認したい内容となっています。

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■目次

総合重機メーカーとは
総合重機大手5社を徹底比較
【株価】日経平均より下、不景気にも弱い
事業ポートフォリオ
自己資本比率でみる総合重機5社の財務比較
総合重機5社の配当とキャッシュフロー
リーマン以降は順調な住友重工
ドイツの巨人シーメンスは手厚い株主還元が特徴
国内最大手の三菱重工はイマイチ
迷走気味のIHI
品質問題で揺れる川崎重工
総合重機大手なら住友重機械工業に投資しよう

総合重機メーカーとは

航空機エンジンの写真

総合重機と言ってもなかなかイメージしにくいですよね。

発電プラントなどパワー事業、大型の産業機械・社会基盤事業、ロケットや航空エンジンなどの航空宇宙事業を扱っている重工メーカーを言います。

総合重機株は国防基幹機能を背負っていることもあり、実際には潰れる可能性が低いのは大きな魅力でしょう。日本の重工機能を背負った、社会的存在意義の大きい企業群ですね。

総合重機国内大手4社+シーメンスを徹底比較

総合重機株といっても様々ありますが、ここでは造船会社を除いた国内大手4社「総合重機」の大手4社を上げて比較してみました。

定義はまちまちですが、重工大手3社である三菱重工、IHI、川崎重工に加えて、住友重機械工業を加えた4社としました。また海外企業との比較のため一部独シーメンスとの比較も入れています。同じく海外重機メーカーの巨人GEは色々問題があって比較対象として適切でないので除外しています。

ただ企業分析を進めてみると、国内の重工業界自体が投資対象として上級者向きであることがわかりました。有名どころが必ずしも投資対象として優良とは限らないようです。

ちなみに僕が転職するときには、株価以外の部分は財務体質を含めてしっかりチェックしていました。新卒でここまで比較するのはちょっと厳しい気もしますが、中途採用で応募するなら応募先の企業はしっかり分析しておきたいところです。

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ただし財務体質と待遇は別問題という点は留意しておきましょう。高待遇であるがゆえに財務体質改善が進まないケースも想定されるからです。

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株価は日経平均より下、不景気にも弱い

総合重機7社(三菱重工、IHI、川崎重工、住友重機械工業、シーメンス)の株価を比べてみます。リーマンショック後の底値である2009年2月を100としたときの指数で表しました。不景気時の動向が見えることが重要と考え、リーマンショック前後の変化が見えるようにあえて10年以上の期間で変化を確認しています。

2005年から2020年までの総合重機5社(三菱重工、IHI、川崎重工、住友重機械工業、シーメンス)の株価推移

ベンチマークとして日経225平均も入れてあります。シーメンスはユーロから日本円換算にしています。

総合重機メーカーは独シーメンスを含めて全て日経平均をアンダーパフォームしています。特に天下の三菱重工は悲惨な値動きです。シーメンスだけはリーマンショックのタイムラグがあるのも面白いですね。

IHI,、川崎重工、住友重工はリーマンショック後の値戻りは日経平均よりも良かったのですが、2015年のチャイナショックで差を埋められて2019年に追い抜かれてしまいました。

特にアベノミクス相場で値上がりが続いた中で後れを取っていたので、よほど業界特有の事情が分かる人以外は不安で継続保有が難しいと想像できます。僕なら投げ売る自信しかありません。

本比較では、日経平均>住友重工≒IHI>シーメンス≒川崎重工>三菱重工の順序になります。業界全体として市場評価はイマイチなようです。

事業ポートフォリオ

各社の事業ポートフォリオを見てみましょう。三菱重工のセグメント分けに従ってグラフ化してみました。各社でセグメント構成を頻繁に行っており2017-2018年くらいしかまともに比較できず、推移が見れないのはちょっと残念。

発電関連や再生エネルギーなどのパワー事業、電車・造船やクレーン等の重機、インフラ関連の産業機械&社会基盤、ロケットや航空機エンジンなどの航空・防衛・宇宙事業ですね。

総合重機5社(三菱重工、IHI、川崎重工、住友重機械工業、シーメンス)の株事業ポートフォリオと営業利益率の比較
各社決算発表資料からSnowゆうぞう作成

国内では「天下」の三菱重工はパワー事業が強いです。2014年に日立と事業統合して競争力強化されたんでしょうか。それでも5%程度で、シーメンスの営業利益率は背中すら見えてませんね。パワー部門と産業機械&社会基盤部門で稼いだなけなしのキャッシュをMRJにブッコミ続けていることがよくわかります。

航空・宇宙事業はIHIの得意分野のようですね。得意の航空エンジンが稼ぎ頭になっています。パワー事業は不振ですね。宿敵の日立と合弁を組んだ三菱重工のように、競争力がないと諦めて他社と仲良くすればいいのにと思ってしまいます。合弁先として魅力がなく放置されているだけなのかもしれませんが。

住友重工は航空・宇宙関連事業はないものの、パワー関連、産業機械&社会基盤でともに安定して7~8%の営業利益率。住友の名に負けない安定感がありますね。

ちなみに縦軸を売上高に変えるとシーメンスの圧倒的存在感が分かります。同時に相対的には小ぶりでも健闘している住友重工の姿が見えてきます。

総合重機5社(三菱重工、IHI、川崎重工、住友重機械工業、シーメンス)の株売上高の比較

自己資本比率でみる総合重機5社の財務比較

重要な財務指標の1つ、自己資本比率を確認します。財務状況の健全性を見る指標の一つで、全体資産のうち返済不要の自己資本の割合を示したものです。

この値が高いほど財務が健全で堅実経営であることを示します。逆に低い場合にはたくさん借金をしてレバレッジの高いチャレンジングな経営をしていると言えます。

シーメンスだけは2008年以前のデータが負えなかったので2009年以降のみ、三菱重工、IHI、川崎重工、住友重工はリーマンショックを挟んだ2006年以降のデータとなっています。

2005年から2020年までの総合重機5社(三菱重工、IHI、川崎重工、住友重機械工業、シーメンス)の自己資本比率推移
各社有価証券報告書からSnowゆうぞう作成

レバレッジを大きく利かせた総合商社とは異なり、製造業は設備資本も多いのでリーマンショックでも意外と激動にはなっていません。重工は投資も大型になりがちで財務体質は全体的に低い傾向です。

そんな住友重工はリーマンショック中も含めて、2006年以降一貫して肩上がりで急速に財務基盤が強化されています。商社や化学と異なって、重機では堅実な住友系のいい面が出ています。

重工の国内最大手、三菱重工は良くも悪くも安定的に30%をキープしていますね。売り上げ規模2.5倍の巨人、独シーメンス社も同じくらいですね。重工業界はリスクも大きいので相応のレバレッジが必要なのかもしれません。

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総合重機5社の配当とキャッシュフロー

リーマン以降は順調な住友重工

1株当たり利益と配当、配当性向を確認してみます。リーマンショックの逆風で痛手を受けた重工業界において、住友重工も例外ではありません。しかし2009年-2010年も赤字を出さずに乗り切り、一株益(EPS)は2019年にリーマンショック前を超えてきました。

財務体質改善と並行していることもあり致し方ないのかもしれませんが、配当性向は日系企業の30%弱をキープしているのが歯痒いですね。

資家目線ではちょっと心もとないものの、無茶な配当掃出しはしない方針なのでしょう。しかし株価はコロナ騒動でもリーマンショック底値を上回っています。この業界では十分健闘しているといえそうです。

住友重工の2006年から2019年までのEPS、1株配当、配当性向の推移
住友重機械工業HP掲載の有価証券報告書からSnowゆうぞう作成

キャッシュフローを確認します。営業CFは文字通り本業の事業活動での収支を表し、健全な企業はプラスを維持しています。営業CFのマイナスが続くようであればビジネスモデルの崩壊が起こっていると考えてよいでしょう。

投資CFは設備投資やM&Aなどでの収支を指します。次なる成長のためにある程度投資は必要なので、ふつうは営業CFの絶対値よりもすこし小さいマイナスです。無謀な買収をしたり過剰投資をするとマイナスの額が大きく、逆に資金繰りに困って資産投げ売りをすればプラスになります。

フリーCFは営業CFと投資CFの合算で、会社の自由に使えるキャッシュです。これが配当や自社株買い、債務返済、内部留保の原資になります。

営業CFは凹凸が激しくなっていますが、営業利益率は5%以上をキープし10%に迫る勢いです。この後紹介しますが、国内大手と比較すれば上々、ドイツの巨人シーメンスと比較しても営業利益率では見劣りしません。泥船に深入りせず半導体向けロボットや建設機械など、マージンがとれて自社の強みが活かせるところで手堅く稼いでいます。

住友重工の2006年から2019年までのキャッシュフロー推移
住友重機械工業HP掲載の有価証券報告書からSnowゆうぞう作成

直近でも投資が増えており、財務体質改善しながら投資もしっかりやって1株益増加させながら投資も積極的に進められていますね。足元の投資加速の中でコロナ騒動勃発は痛いところです。いったん暗黒の時代を迎えそうですが、その後の復活には期待したいところです。

ドイツの巨人シーメンスは手厚い株主還元が特徴

では住友重工以外の国内大手3社以外の6社を見る前に、海外の巨人シーメンスを見てみましょう。

シーメンスは今回比較対象の総合重機メーカーの中で、リーマンショック時に唯一減配していません。さすがに利益は落ちて2008年の配当性向は100%に迫っていましたが、配当性向40~60%と高水準を保ちながらも着実に利益と配当を上積みしてきました。

2012年と2016年には大型自社株買いで7%の発行済み株式を減らしています。発行済み株式が減ると当然1株当たりの利益が濃縮されます。増配だけでごまかすことなく、自社株買いでの株主還元も合わせ技で株主還元する姿勢も一流ですね。

営業利益率はコンスタントに7~8%で安定しています。こう見るとシーメンスの売上髙10%にも及ばない住友化学が同水準の営業利益率を稼いでいるのは健闘していると言えます。

国内最大手の三菱重工はイマイチ

三菱重工は国内は色んな意味で迷走気味です。増益と現役を繰り返しています。2011年以降は減配しないよう頑張っている涙ぐましい姿勢が見えるのは、やっと本当の意味でグローバル企業を意識し始めた証拠なのでしょうか。

営業CFは凹凸の中でも増加傾向にあるのは予想外でしたが、営業利益率も低迷しています。2014年には低利益率の発電プラント事業を65%出資で日立製作所と合弁化したのは良かったのですが、造船で多額の損失を生むなど組織としてまだまだ構造的問題がありそうです。

さらに鳴り物入りで2008年から開発が始まったMRJという爆弾を抱えています。MRJ事業だけで2017年、2018年とそれぞれ1189億円、851億円の営業損失を出しています。他の航空宇宙事業で得た利益を全部持って行かれている格好ですね。そんな中で2019年からはIFRS導入、減損リスクはさらに大きくなってしまっています。

ハイリスクで500億円の政府補助金を受けた準国策事業とはいえ、あまりにも悲惨です。日本としては自前で航空機を持っておきたいというお上の事情は分かりますが、だからこそ投資対象としては疑問符が付きます。株価だって重工業界の中でもぶっちぎりの一人負けでしたよね。

迷走気味のIHI

航空・宇宙事業が絶好調なIHI。1株益(EPS)は激しい上下を繰り返していますね。

2006年度の中間決算と期末決算で有価証券報告書に虚偽記載し、第三者割当増資で約640億円、社債発行で300億円を調達した黒歴史を持つIHI。その反動と景気減速でリーマンショック時には営業赤字に加え営業CFまで赤字になっています。

長期で見た営業CFと投資CFがトントンにしか見えないのは目の錯覚でしょうか。

2016年度はボイラー材料間違いなど、重過失により大規模追加工事発生で多額の損失を生み2016年の減配に続き2017年には無配転落。技術は強いけど経営があまり上手でないのかもしれません。

そういえば財務体質も万年最下位が定着していましたね。業界一好調航空機エンジンの事業も、コロナ問題での航空業界の暗雲に飲み込まれそうで運を引き寄せる経営センスの悪さが全面にでしまっています。造船事業の悪化も追い打ちを掛けそうな勢いですね。

景気減速が見えかくれする中で、高値の2019年11月に慣れない自社株買いを発表してすぐさま一括で実施してしまっています。高値で自社株買いをしてしまう悪しき日本経営のセンスが滲み出てますね。

財務体質改善よりも自社株買い優先を全否定するわけではありませんが、決議だけやっておいてリスク分散でちょっとずつ買えばいいのにと個人投資家の端くれとして思ってしまいました。水増し決算に続く増資の黒歴史に慣れてしまったのか、妙な度胸が経営陣にはあるようです。

収益向上にはプラント事業売却が先のような気もしますが、大ナタを下せないところも含めて良くも悪くも日系企業なのでしょう。

品質問題で揺れる川崎重工

川崎重工と言えば2018年に新幹線の品質問題で大きな波紋を呼んだのは記憶に新しいですね。それでもIHIを見た後だとEPS推移やCF推移がまともに見えてしまうのが不思議なところです。リーマン後に加えて2017年にも配当に手を付けてしまっています。

品質問題を織り込んでも赤字決算まではたどり着かず、IHIほどではないにせよ航空システムでうまく儲けているようです。あとは半導体ロボットや建機なんかも利益率いいみたいです。ここは住友重工とも重なる所がありますね。

企業規模や財務体質を考えると規模に見合った投資CFですが、営業CFが2016年以降低空飛行しているのも品質問題の前兆だったのでしょうか。

日産の件もあり品質問題を起こす企業は、経験上数年間様子見した方がいいかもしれません。僕は日産で30万くらいダメージ受けました。2017年当時の僕はまだまだ青かったみたいです。

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MRJに傾倒して先行き不安な三菱重工、自慢の航空宇宙事業を活かせない経営のIHI、品質問題に揺れる川崎重工は投資対象としてはお勧めできないでしょう。

社会不安の中で投資するなら銘柄分析は徹底的にやって、納得して投資したいところですね。

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