ゴーン騒動で揺れた日産自動車(7201)。筆者もかつて500株投資していましたが、結果として塩漬けからの損切りの憂き目となってしまいました。
■目次
1.日産自に投資した理由
1-1.【理由①】まだまだ高配当
1-2.【理由②】ルノーへの忖度で高配当は続くと見込んでいた
1-3.【理由③】無資格検査問題でさらに割安感が出ていた
1-4.【理由④】あまり使われない株主優待制度
2.塩漬け日産自動車株をさらに買い増し
3.塩漬け日産自動車株を損切で大損害
4.日産自を買い増しして塩漬けにした末路
1. 日産自に投資した理由
1-1.【理由①】まだまだ高配当
2017年当時、無資格検査で話題の中でも日産自動車は景気よく配当金を出していました。2017年当時は100株保有でしたので、税引き前で2650円、税引き後2113円です。今回の配当対象株の購入単価は@1110、税引き後配当利回りは3.4%です。税引き後の配当利回りで考えると大盤振る舞いですね。
1-2.【理由②】ルノーへの忖度で高配当は続くと見込んでいた
日産は43.4%の株をルノーに握られていて、ルノーの筆頭株主はフランス政府です。日産の利益がフランスに移転される仕組みがあり、その旗振りをしているのがカルロス・ゴーン会長とマクロン大統領という事になります。となるとちょっとした業績の低迷くらいでは簡単に減配できる構図ではないと読んでいました。
また総還元性向・配当性向も余裕があります。2017年11月17日現在ではホンダ、マツダより配当性向は高いですが、トヨタやSUBARUと比較すると増配余力が残っているように見えました。継続的なインカムゲインが期待できるため投資妙味が出ていると考えています。
1-3.【理由③】無資格検査問題でさらに割安感が出ていた
無資格検査が話題になった時に業界と銘柄を精査し、権利落ち後に100株追加投資をしています。無資格検査関連の傷口が一時的に大きくなりそうな報道がされていますが、対象範囲の市場が日本だけであることと、車検で時効を迎えることから業績への影響は限定的であると推測されます。
世の中の期待値(というより風潮)に対して実際のグローバル企業としての価値が殆ど毀損していないことからホールド&バイの方針を取ります。マスコミの影響で世間が問題視し始めたためか、10月第1営業日を境目にうなぎ上りの日経平均の推移から大きくアンダーパフォームしています。
しかし、自動車業界を比較するとそれほど悪くないように見えます。
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同じく不祥事を起こしたSUBARUについても財務分析してみました。意外とねらい目だと思って投資したSUBARUも、2021年3月現在で塩漬けになっています。
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1-4.【理由④】あまり使われない株主優待制度
日本株の醍醐味である株主優待制度ですが、日産の株主優待はあまり使い勝手は良くありません。紹介した人が新車購入した際に紹介者である株主に5,000円相当ギフトカード、新車購入した人にも5,000円相当のカタログギフトが贈呈されます。もちろん事前の手続きも必要で、正直株主として優待を感じられるほどのメリットはないです。
裏を返せば形ばかりの株主優待はあるものの、ほとんど利用されず大してコストがかかっていないと言い換えることもできます。自由に使える配当の利回りにキャッシュを回している点はある意味で魅力的でもありました。
2. 塩漬け日産自動車株を買い増し
2-1. 【理由①】ルノー向け配当のお零れに与れる
日産固有の最大リスクはルノーの株式売却で可能性がゼロとは断言できません。しかし今となっては日産の配当収入は業績が低迷しているルノーのドル箱。何もせずに継続的に配当収入が得られる状況を簡単に手放すとは考えにくいです。またカルロス・ゴーン体制が暫くことから日産・ルノーアライアンスは当面続くのではないかという仮説を持っていました。
2-2. 【理由②】品質問題での株価下落
日産と言えばゴーン騒動と品質騒動。騒ぎとなったのは2017年9月29日、国交省の抜き打ち検査で発覚したものですね。このニュース報道を聞いて無資格検査と世間で騒がれる予感と共に、日産株を買い増しするチャンス到来を感じたのも日産株を買い増した大きな理由です。
製造業に携わる2017年当時の若造であった筆者。よくある類の軽微なミスで、ISO(品質管理方法に関する国際規格)の「手続き」の一部に抜け漏れがあっただけの話だと思ったんですね。この「手続き」というのがポイントです。品質検査はきちんと技量を持った人がやっていることが証明できなければなりません。このため「技量がある」ことを証明する手段として作業者ごとに品質検査の技量認定をして、それを書面で残すということが行われています。
社内で普通に仕事してきた人であれば、何事もなく認定がおりて有資格者となります。この書面管理が結構面倒で、監査の時に抜け漏れが発覚することがあります。大抵は監査前の書類準備で気づいて慌てて揃えて大事に至らないものですが、運悪く書類確認前に国交省に見つかってしまったのだと思ってました。検査担当の人も全くのど素人ではなくそれなりの経験のある人がやるわけで、車両の不具合が見逃されて大問題になるとは思えませんでした。
今思えばゴーン体制を含めた組織的問題の大きな予兆だったのでしょうが、組織運営の難しさを体感していない若造にはなかなか理解できないものです。このIRで品質不祥事、30代半ばに差し掛かりマネジメントを経験した今なら即座に損切していたでしょう。
2-3. 塩漬け日産株を500株までナンピン買い増し
この仮説のもと、2017年11月~2018年11月にかけてコツコツと買い増しし、500株@1068を保有するに至りました。品質検査問題が出ていた時点で組織的な問題があると判断すべきでしたが、投資家としても社会人としても未熟だった筆者には事の重大性に気づけませんでした。
2017年当時の筆者運営ブログのメモを抜粋しておきます。これが黒歴史を招いた浅はかな考察ですね。
※以下2017年当時の黒歴史です。
日産が割安になる要素は売り上げ面でホンダに引き離されつつあることしかありません。また上記データからは読み取れませんが、リーフで先行している電気自動車が利益貢献するまで息が長そう、という電気自動車への市場期待値の低さもあるかもしれません。
大規模リコールなどの大イベントがない限り減配要素はないように見えます。今回の無資格検査員のリコール問題も対象台数は多いですが、検査不具合による事故がなければ重大な影響にはならないでしょう。新型リーフ発売のタイミングと重なったのは痛手ですが。
今回の分析でルノーが筆頭株主である限り、日産株を保有することにメリットがあると考えました。僕の保有株の中でこれほどの高配当銘柄は今のところありません。ルノーの資本引上げ等の騒動がない限りはホールドして高配当の恩恵を受けようと思います。
※黒歴史ここまで
同じく無資格検査で揺れるSUBARUも、かなり割安になったという判断の元インカムゲイン狙いで11/17に100株だけ仕込んでしまいました。こちらも2021年3月現在未だに塩漬けとなっていて、筆者の投資歴の黒歴史です。
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SUBARUのデータ改ざんの調査報告書が公表されました。自動車メーカーで不祥事のあった日産自動車、三菱自動車と合わせて投資家目線でデータ改ざん問題の影響を考察してみます。
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3. 塩漬け日産自動車株を損切で大損害
そんな期待を以てホールドしていた日産自動車株も2020年2月に減配を発表したため、200株@528を売却しました。ここでも当初のルノーへの忖度で減配はしないだろうというシナリオが崩れたにもかかわらず全て売却しないという失敗を重ね、傷口に塩を塗る羽目に。
塩漬けが全て悪いとは決して思いませんが、自分の描いたシナリオが崩れた時は売り時です。高い授業料になりました。
結局2020年7月に無配転落が決まり、残りの300株@372も売却。約30万円の損失を出してしまいました。またこの時が材料出尽くしで底値だったのも痛手でした。塩漬け株を中途半端なところで手放すとキズ口が広がることを学ぶ経験となりましたね。
4. 日産自を買い増しして塩漬けにした末路
結局のところ、塩漬け株を最後まで塩漬けにすることもできず、たった500株で30万円もの損失を出してしまったのでした。高配当というだけで飛びつくと痛い目にあいます。また中途半端に塩漬け株を手放したのも良くなかったのでしょう。
早々と撤退するか、塩漬けにするなら徹底的に塩漬けにするのが良かったのかもしれません。
幸い入金力でなんとか損失はカバーし、今はポートフォリオも整理しすっきりさせています。よろしければ合わせてどうぞ。