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企業分析

【大手8社徹底比較】素材メーカーの勝ち組は?

2020-10-25

縁の下の力持ち的存在の素材メーカー。意外と裾野が広いのですが、素材の中でも明暗の分かれる業界です。

本記事では素材を「有機素材」「無機素材」に分けて国内大手8社を徹底比較しました。歴史は繰り返させるという考え方から、本記事ではリーマンショック前後を含む過去15年間の推移も載せてあります。就職や転職を考えている方にも参考になると思います。

■目次

1.素材メーカーとは
2.大手素材メーカー8社とは
 2-1.有機素材大手5社
 2-2.無機素材大手3社
3.素材大手8社を徹底比較
 3-1.比較①:株価推移
 3-2.比較②:自己資本比率の推移
 3-3.比較③:売上高の推移
 3-4.比較④:従業員1人当たりの売上高推移
 3-5.比較⑤:従業員1人当たりの営業利益推移
 3-6.比較⑥:従業員の平均年収推移
4.CF、EPS推移からみる国内素材大手各社の財務・特徴の比較
 4-1.富士フイルム ~主力事業がなくなる恐怖を体験済~
 4-2.ENEOS ~石油のチカラは無限大~
 4-3.ブリジストン ~ゴム業界の雄~
 4-4.東レ ~炭素繊維しか勝たん~
 4-5. 王子HD ~製紙業界の雄~
 4-6.日本製鉄 ~構造不況に苦しむ鉄鋼業界の雄~
 4-7.住友電工 ~電動化で車載ハーネス需要伸びる?~
 4-8.AGC ~ガラス以外の事業拡大がカギを握る~
5.結論:素材国内大手は一様に語れない

1. 素材メーカーとは

村田製作所HPより引用

素材メーカーとは、化学、石油、繊維、ゴム、パルプ・紙、鉄鋼、非鉄金属、ガラス・土石の8業種を指します。素材メーカーとはそもそも何ぞやという事に関しては、こちらの記事をどうぞ。

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2. 大手素材メーカー8社とは

素材は大きく分けて有機素材と無機素材に分けられます。本記事では有機素材業界の大手5社、無機素材の大手3社を合わせて大手素材メーカー8社と呼びます。

2-1. 有機素材大手5社

有機素材は有機物からなる化学素材のことで、有機素材を扱う業種は化学、石油、繊維、ゴム、パルプ・紙、の5業種ですね。それぞれの業界で売上TOPの5社を「有機素材大手5社」と呼びます。

本記事での化学業界最大手は、富士フイルム(2019年度売上高2.3兆円)としました。総合化学は別記事で詳しく書いていますので、興味のある方はこちらも合わせてどうぞ。

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石油業界は度重なる経営統合を乗り越えた業界の巨人ENEOS(2019年度売上高10.0兆円)、繊維業界は炭素繊維ダントツトップの東レ(同2.2兆円)、ゴム業界は世界のブリジストン(同3.5兆円)、パルプ・紙業界は王子HD(同1.5兆円)としました。

2-2. 無機素材の大手3社

無機素材は有機物以外の化学素材を指します。無機素材を扱う業種は、鉄鋼、非鉄金属、金属製品、ガラス・土器、の4業種ですね。それぞれの業界で売上TOPの3社を「無機素材大手3社」と呼びます。

鉄鋼業界は業界再編を経て最大手となっている日本製鉄(旧新日鐵住金、2019年売上高5.9兆円)、非鉄金属業界は住友電気工業(同3.1兆円)、ガラス・土石業界はAGC(旧旭硝子、同1.5兆円)としました。

3. 素材大手8社を徹底比較

素材国内大手8社を徹底比較します。有機素材大手5社、無機素材大手3社に分けて各項目を比較してみました。

3-1. 比較①:株価推移

国内大手8社(有機素材大手5社:富士フイルム、ENEOS-HD、ブリヂストン、東レ、王子HD、無機素材大手3社:日本製鉄、住友電気工業、AGC)の株価を比べてみます。ENEOSの前身JXTG発足の2010年5月を100としたときの指数で表して比較してみます。リーマンショック前後を含めた過去15年間の推移を見てみましょう。

ベンチマークとして日経225平均も入れてあります。残念ながら日経平均から全社アンダーパフォームです。ブリヂストンはリーマン後しばらくアウトパフォームしてましたが、コロナショックで大きくダメージを受けた格好ですね。

ブリヂストン、富士フイルムはまずまず検討していますが、東レ、王子HDは過去10年でヨコヨコ、15年だと時価総額ダウンですね。ENEOS、AGC、日本製鉄は半減、ミドサー世代の筆者でも定年まで逃げ切れないんじゃないかと思わざるを得ない低空飛行ですね。。。

3-2. 比較②:自己資本比率の推移

重要な財務指標の1つ、自己資本比率を確認します。財務状況の健全性を見る指標の一つで、全体資産のうち返済不要の自己資本の割合を示したものです。この値が高いほど財務が健全で堅実経営であることを示します。逆に低い場合にはたくさん借金をしてレバレッジの高いチャレンジングな経営をしていると言えます。

高位安定型の富士フイルム、低位安定のENEOS、右肩上がりのブリヂストンと様々ですが、業界全体のトレンドとしては程度の差こそあれ右肩上がりの業界が多いです。リーマンショックで沈んだ後徐々に財務基盤を立て直してきたことが読み取れます。自己資本が多いとM&Aを含めた大規模投資など事業戦略の自由度が大きくなるため、好景気の時に増強する企業も多いです。

ブリジストンは財務基盤を急激に強化してきました。この急激に強化した自己資本の向かい先が気になる所です。M&Aでも仕掛けるんでしょうか。実際に過去には大型買収を行っていて、1988年の米国2位ファイアストン社(買収額3300億円)、2006年の米国再生タイヤ大手バンダグ社(同1200億円)などがあります。前回の買収から15年が経過し、次の一手を繰り出す兆候なのかもしれません。

富士フイルムも高位安定ですが、キャノンに競り負けた東芝メディカル、買収断念したゼロックスなど、大型M&A案件に備えて自己資本を確保していると言えそうです。ただ2008年の富山化学工業(買収額1200億円)2017年の和光純薬(同1700億円)など相応の規模のM&Aを積極的に行ってきているだけに、今後の動向が気になる所です。

資源ビジネスの側面も大きいENEOSが低位安定なのは致し方ないのかもしれません。一方で2012年に新日鐵と住友金属工業が合併して国内で業界ダントツトップになった日本製鉄の苦戦ぶりが良くわかります。

同じ製造業とはいえ、このM&Aの額が総合化学業界、製薬業界、総合重機業界とは様相が全く違います。製薬に比べれば業界全体としては変動は穏やかで、成長基調の平和な業界と言えそうです。そういえば昭和電工という柄に合わない無謀なM&Aやってた総合化学企業もありましたね。

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3-3. 比較③:売上高の推移

3-3-1. 連結売上高の指数化による比較

売上高推移を指数で表してみました。イマイチ株価の推移と動きがあっていません。ダントツトップは有機素材では東レ、無機素材では住友電工ですね。東レは汎用繊維や炭素繊維、住友電工は自動車用ハーネス等で売上を急激に伸ばしました。

逆にENEOSや富士フイルムは右肩下がり傾向です。ENEOSは国内供給過剰の石油の生産能力DOWN、富士フイルムもフイルム事業が終わった後の規模維持に腐心しているのでしょうか。企業価値は売上高だけでは測れませんが、これだけ差がついていると勘ぐりたくなります。

3-3-2. 連結総売上高の絶対額比較

連結総売上高の推移も合わせて載せておきます。随分景色が変わりますね。売上高が高いマンモス企業の未来が必ずしも明るいとは限らないことが良くわかります。絶対値が随分違うので、指数化した方が各企業の上下トレンドが分かりやすく比較できますね。

業界分析は投資を検討されている方以外にも、就職・転職を検討している方にも必須です。一口に素材と言ってもそもそも汎用品で外部要因を受けやすいもの、汎用化が進みやすい高機能材、参入障壁が高く高付加価値を出しやすい材料などがあり、数字として如実に表れるからです。ただ本記事は投資家目線がメインなので、転職を検討される場合にはOpenworkなどで待遇や社風も合わせて確認しておきましょう。

ちなみに僕が転職するときには、株価以外の部分は財務体質を含めてしっかりチェックしていました。業界として拡大が続く中で中途採用も増えていますが、新卒応募でもしっかり企業財務の分析をしておきたいところです。

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3-4. 比較④:従業員1人当たり売上高の推移

従業員1人あたりの売上高推移の比較結果を確認します。売上高は分かりやすい指標ですが、一人当たり売上高が高い業界は効率性が高い一方で従業員のプレッシャーも高い環境であると予想できます。この値が高いほど従業員1人当たりの生産性が高く、1人1人がしっかり労働している可能性が高いです。逆に低い場合には非効率的な部分が多いかもしれません。もちろん高価な原料を使っている、新興国で安価な労働力を多数抱えているなどの要因があるケースもあります。ビジネスモデルにも大きく依存する指標なので一概には言えない部分もありますが、一つの指標としてみてみましょう。

有機素材大手5社(富士フイルム、ENEOS、ブリヂストン、東レ、王子HD)の2005年度~2019年度までの自己資本比率推移の比較(対数比較)
各社有価証券報告書からS-ゆうぞう作成

有機素材メーカーの比較をしてみます。石油の巨人ENEOSの存在感が圧倒的ですね。石油業界は資源ビジネスの側面もあるからなのでしょうか、1人当たりの売上高は非常に高いです。従業員の立場からすると他社の何倍もの金額の製品を扱う事になるので相当なプレッシャーでしょう。

次に特異なENEOSを除いて、有機素材大手、無機素材大手それぞれを比較してみます。

有機素材では2010年頃までは王子HDがダントツトップでしたが、現在は東レがトップですね。祖業の一般繊維(2004年度:5100億円⇒2019年度:8800億円)、長年のR&Dの成果物である炭素繊維(2004年度:700億円⇒2019年度:2300億円)を始めとして売上げを急激に伸ばしてます。優秀な従業員数を十分確保できなかったのでしょうか、生産性改善で乗り切っていることが伺えます。

逆に王子HDは売上高自体の伸びとは逆の動きをしています。新聞などのメディア向け需要衰退(2004年度:4300億円⇒2019年度:2900億円)と再生資源ビジネス拡大(2004年度:500億円⇒2019年度:2900億円)などの影響で、同じ売上げでも人手がかかるようになっているのかもしれません。

無機素材は日本製鉄の1人当たり売上高の高さと下落トレンドが目立ちます。中国メーカーの台頭とともに売上げ減に悩む中、従業員数は右肩上がりとなっているので当然の成り行きではあります。住友電工、AGCはなんとかキープしているといったところでしょうか。

3-5. 比較⑤:従業員1人当たり営業利益額の推移

従業員1人あたりの営業利益額推移の比較結果を確認します。効率的に利益創出しているかという点を確認するために重要な指標です。一般的にはこの値が高いほど稼ぎ方・リソースの使い方がうまく、逆に低い場合には稼ぎ方が下手である可能性が高いです。

ただ素材業界においては、値動きが大きい原料として使用する特殊な業種もあります。たとえば石油業界のENEOSは在庫評価で浮き沈みが非常に激しくなっていて、他の素材業界とは異なる挙動をしていますね。日本製鉄は時代の流れも大きく、長期推移でみると15年前の高利益率時代は終焉を迎え、直近10年は低空飛行です。

連結1人当たり利益は15年平均ではENEOS:660万円/人、日本製鉄:410万円/人、10年平均ではENEOS:640万円/人、日本製鉄:180万円/人です。ENEOSは在庫評価起因の激しい上下動の中でも長期的には高水準の利益を出していますが、日本製鉄はかなり苦しい状況であることが読み取れます。

資源価格の影響を受ける素材大手(ENEOS、日本製鉄)の2005年度~2019年度までの従業員1人当たり利益推移の比較
各社有価証券報告書からS-ゆうぞう作成

ENEOSを除く有機素材大手4社は推移こそ色々ありましたが、直近2年間は同程度となっています。良く言えば安定的、悪く言えば地味な「素材」の特徴が出ていますね。無機素材はAGCが有機大手4社と同程度の安定推移、住友電工はかなり低くなっています。住友電工は海外工員として抱えている大量の従業員数で利益が薄まっているという感じでしょうか。

原油価格の影響をモロに受けるENEOS、業界の構造不況に巻き込まれた日本製鉄以外は、有機素材・無機素材とも実質的な1人当たり利益は同程度と考えて良さそうです。

3-6. 比較⑥:従業員1人当たり平均年収の推移

各社の従業員「平均年収」のデータを比較します。ここが一番気になるという方も多いのではないでしょうか。ここでは会社法での執行役以上の役員を除き、所謂「執行役員」以下の従業員の平均年収です。有価証券報告書をもとに作成しています。

一応データとして載せましたが、あくまで同一会社内での時系列変化のトレンドくらいしかわかりません。給与の高い人を持ち株会社に集めて平均年収を高く見せることもできます。逆に現場人員を本体に組み込んだり管理職を集計対象から除外するなどして、実態より低く見せることも出来ます。

同一の会社での時系列変化を見ることで、業績変動による年収への影響度くらいは見られるかもしれません。ここでは再編前についても統合前の個別企業IR情報を元に推定して掲載してあります。しかし素材業界、特にENEOS、日本製鉄、王子HDは業界・組織再編の影響が大きすぎて実態はよくわかりません。

ENEOSの場合、2012年度の新日本石油と新日鉱HDの経営統合、2017年度のJXエネルギーと東燃ゼネラルの経営統合の影響で、数字の推移すらマトモな比較は難しくなっています。2005年度から2011年度の年収推移、2012年度から2016年度、2017年度から2019年度の各推移から、石油業界として年収下降トレンドにはあるとは言えそうです。

日本製鉄の場合も、新日鐵と住友金属工業との経営統合の影響で2012年度の変動が大きくなっています。また絶対額についても「役職者を除い」たものであり、一体何の数字を載せているのかさっぱりわからない代物となっています。

王子HDの2012年度の大変動も持ち株会社制移行に伴う急変であり、それ以前・それ以降ともごく緩やかな下落トレンドにある可能性があるかなという程度でしょう。

一方でブリジストン、東レ、住友電工、AGCはリーマンショック以降は上昇傾向となっていて、同じ素材大手であっても年収動向は業界によって差がついていると考えて良いでしょう。有価証券報告書には記載されていない年収動向は、就職四季報を参考にしましょう。過去3年分が掲載されています。

4. CF、EPS推移からみる国内素材大手各社の財務・特徴の比較

4-1. 富士フイルム ~主力事業がなくなる恐怖を体験済~

素材大手屈指の厚い自己資本が特徴の富士フイルム。市場シェア7割のコダックの後塵を拝し、シェア1割強万年2位のポジションだったフイルム事業からの撤退が2004年、はや15年が経過しました。売上高はフイルム撤退前の2000年度で1.4兆円でしたが、2019年度は2.3兆円。撤退前よりも売り上げは倍増近くになっています。

CFはリーマンショック前はやや投資過剰でしたが、直近10年はM&Aの手を止めない中でも営業CFとのバランスを意識しているように見えます。また1株益(EPS)も順調に伸ばし、配当も渋ちんながら着実に増やしてきました。事務機分野で手堅く稼ぎながらメディカルで着実に業績を伸ばしていきそうな気配ですね。

4-2. ENEOS ~石油のチカラは無限大~

主力の国内需要衰退の波の中、業界再編の主役を担いながら業界全体の利益を確保してきたのがENEOS-HD。直近15年間でも2010年の新日本石油と新日鉱HDの経営統合、2017年の東燃ゼネラルとの経営統合がありました。

キャッシュフロー、1株益とも凹凸が激しく正直良くわかりません。良くも悪くも資源価格の影響を受けていることがこのグラフからも予想できますね。

ちなみにENEOSは有機素材だけでなく、グループ中核子会社のJX金属で無機素材も扱っていることも特徴ですね。石油からの脱却を謳いJX-HD発足後から金属事業にも大規模投資をしてきていましたが、金属事業の存在感は年々減少傾向のようです。業界再編もひと段落し、製油所の統廃合で固定費を削りながら粛々と利益を捻出していくのでしょうか。

4-3. ブリジストン ~ゴム業界の雄~

素材業界の中で株価推移が一人勝ちだったブリヂストン。キャッシュフロー、1株益ともリーマン直後は苦しい時期もあったようですが、全体としてピカピカですね。タイヤだけでは生き残れないとも言われており、今後の事業展開が気になるところです。

4-4. 東レ ~炭素繊維しか勝たん~

炭素繊維やユニクロ素材で有名な東レ。特に炭素繊維は1960年代から開発着手しており、素材開発には長期的スパンが必要であることを世の中に知らしめた代表格の企業ですね。

キャッシュフローはやや投資過剰となっていいますが、営業利益は十分に保てているようです。減損リスクは要注意ポイントではありますが、今後の投資成果に期待したいところです。

4-5. 王子HD ~製紙業界の雄~

素材業界の中でもとりわけ地味な存在である製紙業界。新聞や雑誌の衰退、ペーパーレスなどで業界全体の大きな逆風のもと、リサイクルなど再生資源ビジネスへの転換、東南アジア諸国の外需取り込みを着実に進めてきました。キャッシュフロー、一株益とも長期スパンでは右肩上がり傾向になっており、自己資本も緩やかに増強されてきています。次の1手が気になる所です。

4-6. 日本製鉄 ~構造不況に苦しむ鉄鋼業界の雄~

中国企業、韓国企業との競争激化で事業環境が急速に悪化している製鉄業界。2012年の新日鐵と住友金属工業の経営統合で国内の小競り合いは少々緩和され、一時キャッシュフローも改善されましたが、厳しい状況には変わりないようです。キャッシュフローからは投資圧縮で利益を捻出している様子も垣間見えていて、JFEと統合した方がいいのではないかとも思ってしまいます。

直近数年でも人材流出が激しかったことに加えて、コロナショックで大打撃を受けてしまいました。呉製鉄所の廃止という英断で十分な止血効果が発現できるといいのですが。

4-7. 住友電工 ~電動化で車載ハーネス需要伸びる?~

非鉄金属業界の雄である住友電工。非鉄金属の他者と比較すると車載ハーネス市場でのシェアで大きな存在感を示しています。キャッシュフローも増加傾向、景気の波を受けながら1株利益も増加傾向となっていますね。自動車の電動化で車載ハーネスの使用量が伸びてシェアが維持できれば、一層の飛躍もあるかもしれません。

4-8. AGC ~ガラス以外の事業拡大がカギを握る~

2018年7月に旭硝子から商号変更したAGC。2019年度の売上ベースでガラスは50%未満と利益ベースではガラスの存在感はさらに薄く、化学品や電子材料などが圧倒的存在感を示しています。

キャッシュフローは営業CFと投資CFが拮抗していて、1株益も伸び悩んでいます。長年の種まきの甲斐もあって薄利多売のガラス1本足からは脱却しつつあり、商号変更とともに高機能セラミックスやヘルスケアなどの新規事業の拡大が期待されますね。

5. 結論:素材国内大手は一様に語れない

今回は気合を入れて国内素材大手8社の徹底比較をしてみました。足元手堅いブリヂストンM&Aが上手い富士フイルムが投資対象としては一見有望に見えます。ただ海外メーカーのプレゼンス上昇と共に日本メーカーの存在感が相対的に薄れている状況で、今後の動向はなかなか見通しにくいというのが実情ではないでしょうか。

足元の待遇狙いならENEOS一択ですが、業界先細りの中で高待遇がいつまで維持できるかも不透明でしょう。鉄鋼業界のように海外メーカーが急速に力をつけて業界不況の波にのまれる状況も考えられます。各社とも今後の動向が気になりますね。

"B to B"ビジネスと違って"B to C"ビジネスでは、消費者である自分や周囲の状況の確認も大事です。清涼飲料メーカーなら、国内大手ではなくコカコーラ社一択でしょう。

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