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通説を疑え

2017-12-29

今回は久々の東大ネタに関する雑記です。

みなさんの物事の判断材料は何でしょうか。正しい判断を下すためには確かな情報が必要ですが、何をもって確かな情報と判断できるのでしょうか。

■例えば…

 F=ma (力=質量×加速度)

 理系科目が得意な人は勿論、苦手な人でも一度は目にしたことのあるような、物理の基本法則(運動の第2法則)です。僕は中学生の時にこの法則を疑ってしまい、物理科目で落ちこぼれました。受験科目では物理を捨てて嫌々生物をやる羽目になり、大学入学後も大変な苦労をしたのです。ただ今思い返してみれば、物事を鵜呑みにしない習慣はこの頃からあったのかもしれません。

■原理、法則、公式・通説

 最初に少し理屈っぽい説明をしますので、理系思考が苦手な方は少し読み飛ばしてください。まずは言葉を整理します。分かりやすくするために少し不正確な部分がありますが、ご容赦ください。

 原理:経験や実験を元に明らかな事実として認められたある性質
 法則:原理から導かれるもの
 公式:原理、法則から論理的思考から導かれるもの(公理ともいう)・・・通説と読み替えて頂くとイメージしやすいでしょう。

 原理や法則は過去の偉人たちが膨大な実験をする等して、事実として見つけたものです。公式はこの事実を組み合わせて方法論化したものです。当時法則であるF=maを疑った僕は、過去の偉人たちが見つけた原理原則まで「なぜそうなのか」と疑ってしまったのです。もちろん経験や実験を元にして事実として認められた性質なので、考えても絶対にわからずそういうものだとして受け入れるべき内容ですね。

 一方で公式はというと、1つ、ないし複数の原理・法則から導かれる便利なツールです。そのツールがどういう原理・法則に基づいて導かれるのか、所謂「なぜそうなるのか」を理解することができるものです。

■公式・通説を鵜呑みにするな

 公式はなぜそうなるのかを論理的に説明することができます。一方でなぜそうなるのかを理解せず、原理・法則と同じように盲信することもできてしまいます。公式を盲信する、つまり鵜呑みにすると本質的な原理・法則との繋がりが見えなくなるので、公式の成り立ちを理解することは物事の本質的な理解をするうえで必要不可欠なことです。

巷では便利な「公式」に溢れています。たちの悪いことに、さも実験・経験的に明らかな「原理」「法則」の仮面を被った「公式」もたくさん存在します。世の中の大半の人は、その「公式」を疑うこともなく原理・法則と同じように正しいこととして物事を考えています。正確に言うとただ噂を信じているだけで、考えたつもりになっています。

■金とプラチナはどちらが希少か?原理的から考えてみよう

投資を例にとります。金とプラチナはどちらが希少だと思いますか。正解はプラチナです。迷う余地はありません。

地球上に存在する資源量(これまでの発掘総量と人類が掘り出していない埋蔵量)は金が23万トンに対してプラチナはたったの2万1千トンしかありません。「希少」とは珍しくて少ししかないことを言うので、資源量の少ないプラチナの方が希少なのです。

 中には金の方が希少だと思った方もいらっしゃるでしょう。2000年以降の相場ではプラチナの方が高い時期の方が長いですが、2015年以降はプラチナよりも金の方が高価である状況が続いています。

 しかし「高価」であることと「希少」であることを混同してはいけません。中学の公民で習った通り、価格は需要と供給の関係で決まります。なので単純に需要と供給のバランスを比較すると、金の方が需要量に対する供給量が少ないということに過ぎません。

(参考)12月22日時点相場
 金:1トロイオンスあたり1270.6ドル
 プラチナ:1トロイオンス921.5
※トロイオンス(1oz)は約31gです。

世の中では「希少なものは価格が高い」という「公式」「通説」を嘯く人がいますが、これを原理・法則から導くと次のようになります。

1、希少なものは需要に対して供給が少ない<傾向がある>
2、需要に対して供給が少ないと価格が上昇する
3、よって希少なものは価格が高い<傾向がある>

原理法則まで考えると巷に溢れる「公式」「通説」らしきものの本質がわかり、どの程度公式を信用して良いか判断することができるのです。

■プロの「通説」を盲信してはいけない

金とプラチナの関係くらいは知ってるよという方も多いでしょう。これが少し分かりにくくなると、盲目的に信じてしまう傾向があるように感じます。先日ジムのサウナで次のような会話を耳にしました。

 「カナダの国債は儲かると銀行の人に言われたので去年の今頃(2016年12月)買ってみたけど全然ダメ2割くらい下がった。カナダはシェールオイルが出るからカナダは買いってことみたいで。他の投資信託は儲かってるのもあるし、運が悪かった。」
 突っ込み所満載ですね(笑)含み損が出ている原因は運が悪かったことではなく、カナダはシェールオイルが出るから儲かるという銀行マンの「通説」を鵜呑みにしてカナダドルの国債に投資したからです。

 輸出量が増えると輸出で稼いだ外貨をカナダドルに替えるのでカナダドルが買われ、カナダドル高円安になる。だから円建てでは儲かるというのは正しいですね。

ではシェールオイルがたくさん出ると必ずカナダの輸出量が増えるかと言うと、必ずしもそうとは限りません。シェールオイル増産によって需給が緩み、原油価格が下がる可能性もあります。そうすると需要と供給の関係からシェールオイル供給量が下がり、結果としてカナダの輸出量が減るというシナリオは容易に想像できます。ただし原油は中東情勢にも大きく左右されるので、そのシナリオをリスクとして想定した上で投資するという選択肢もあるでしょう。

 ここでの落とし穴は投資対象が国債という点です。2016年12月というとトランプが大統領選で勝利し減税が期待されている状況でした。また緩やかな景気拡大の中で隣国である米国の利上げが進む可能性が高い状況です。こうなると米国株価の上昇圧力が強まります。さらに米国金利が上昇するので、相対的にカナダの金利は下がりドル高カナダドル安が進行するというシナリオも容易に想像できるでしょう。

 他人の「通説」を鵜呑みにして検証を疎かにすることは、自らの資金をハイリスクローリターン化することを意味します。プロの機関投資家のように深い洞察はできないにしても、もう少し「公式」を疑い社会一般を勉強するだけでも投資リスクを下げる行動が取れるはずです。

■【東大式】公式・通説は原理から考える習慣をつけよう

今回の記事がなぜ東大ネタかというと、東大卒は公式を原理・法則から導くことに秀でているからです。東大入試では盲目的に公式を信じる人は合格点をとることが難しい試験になっています。全体的に本質を問う出題が多いからです。

合格者層にとってのサービス問題は、誰もが知っているレベルの基本公式の「成り立ち」で簡単に解決できます。逆に基本理解が不十分だと全く手が出ない類のものになっていることが多いです。結果として東大合格レベルの受験生は原理・法則から公式を理解する習慣を否応なく身に付けざるを得ません。受験を通して公式・通説を疑い、自分なりに検証し腹落ちするまで考えることが習慣化されているのです。

幸い公式・通説を鵜呑みにせず成り立ちを腹落ちするまで調べ考えるだけであれば、東大合格ほど難易度が高いわけではありません。投資に関わるリスクを必要以上にとらないためにも、身に付けておいて損はない習慣だと考えます。まずは見聞きしたことについて原理・法則か公式・通説かを判別する週間を身につけましょう。身近な公式・通説を疑ってみることから始めてみてはいかがでしょうか。

便利な分析ツールは積極的に使いこなしたいところ。使いこなすためにはそのツールの本質をしっかりと理解する必要があります。原理・法則の例をたくさん知っておくことで、本質を見極めて自在に使える力が身につきます。

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素材さん

東大卒を活かせてない経歴の社畜。工場勤務のヒントを綴ります。転職、結婚、資産形成、資格取得、仕事感。共通点ある方のヒントになれば幸いです。 転職1回目で僻地突入、転職2回目で僻地脱出。/30代前半/東大卒(学部・院)→中小→大手JTC→超大手JTC/素材開発エンジニア/既婚/3人兄弟の真ん中

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