言葉は聞いたことのある4象限マトリクス。使いこなせれば便利なのですが、意外とうまく使えていない人も多いのではないでしょうか。
今回は4象限マトリクスの意外な応用例とともに、目的や応用方法など4象限マトリクスの本質を紹介します。
優れたプレゼン資料に不可欠のツールであるウォーターフォール図についての説明記事です。プレゼンの表現方法に困っている方はこちらも合わせてどうぞ。4象限マトリクスと同じように使いこなしたいところです。
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ウォーターフォール図を使いこなそう
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【4象限マトリクス活用例①】公務員志望動機を書くなら…
妻が地方公務員への転職を考えていて履歴書等の提出書類の確認をしました。志望動機の中には「なぜ公務員なのか」「その中でなぜ●●市役所なのか」という公務員定番の設問があり、ありがちな「利益追求は嫌、世の中のために役立つことをしたい」というダメ回答が書かれていました。
僕は民間企業に勤めるサラリーマンで公務員の資質もないし興味もありません。しかしこの回答が良くない例であることだけは即座に理解できました。おそらく採用関連業務を担当されたことがある人も同じような感想を持つのではないでしょうか。
四象限マトリックスで日本法人・組織を分類すると…
この回答がNG例であることは四象限マトリクスを使えばわかりやすいです。4象限図とも呼ばれます。2軸思考を用いて象限分けし、2軸を対比させることで、選択肢のうちどれが最有力なのかを示すことができるのが4象限マトリクスの最大の特徴です。
「なぜ公務員なのか」という問いに対して答えるべき回答は、他の選択肢と比較して公務員を志望する理由です。そうなると公務員という職業の立ち位置を論理的に説明できる必要があります。
そこで一例ではありますが、「公益」と「私利」という2軸を対比させながら4象限マトリクスを作成してみました。
色々と突っ込みどころもありますが、大枠ははずしていないでしょう。各立ち位置について説明します。
例1. 医療機関(病院など)
医療機関(病院)を例に考えてみす。大きく分けて公立病院と私立病院に分けられます。公立病院は国民のために必要不可欠であり、如何なる経営努力をしても赤字経営になる地域でも存続が必要です。だから公益性は高く、私利追求性は低いと言え、グラフ左上の②に位置付けられます。私立病院は赤字経営では成り立たないので、公立病院よりも①寄りに表現できます。
例2. 反社会的勢力
もう一つ、反社会的勢力を考えてみます。議論の余地もなく公益性はないでしょう。私腹を肥やすことが目的であることが多いものの、必ずしもそうとは限らない点でグラフ下の③―④に位置付けられます。
例3. 民間企業
民間企業は私利追求が組織の大きな目的の1つです。グラフ右側に位置付けられるといえるでしょう。ただし私利追求と公益性の両立をし多額の法人税を納税している立派な企業ばかりではありません。社会的ニーズを無理やり作り出して赤字を垂れ流し、法人税も納めないのに迷惑電話ばかりかけている企業もあります。
法人税を納めている25%程度の企業は①であり、法人税を納税できていない企業の中には④に位置付けられる問題企業もあるということになります。
例4. 国家機関・役所
国家機関・役所について、公益性は言わずもがなですが、利益追求する場所とまでは言えないもののマクロでの収支均衡は求められます。この意味で①と②の中間より若干②寄りという事になりそうです。
4象限マトリクスで公務員志望動機を整理

ここで冒頭の公務員志望理由のダメ回答である「利益追求は嫌、世の中のために役立つことをしたい」を思い出してみてください。この回答では利益追求と公益性担保は両立できないことが前提となっています。では利益追求の結果多額の利益を計上し、多くの法人税を納めることは世の中の役に立っていないのでしょうか。
法人税は日本の歳入の12.5%、国債による借入金を除いた税収の約20%を占めており、法人税なしでは国家予算は成り立ちません。企業が利益を出しているからこそ、国民への行政サービスにお金を使うことが出来るのです。利益追求は悪ではありませんし、社会的にも十分有意義なことと言えます。
また限られた予算の中で最大限の国民サービスを提供するのが公務員の社会的役割であるため、利益のことを考えなくて良いわけではありません。ある部門で得られた利益を他部門で国民に還元していく流れを考えることも重要な仕事でしょう。
なので無難な公務員の志望理由回答例としては、「個別の事業に対する利益追求が主の企業ではなく、世の中全体の流れを考えて国民のために奉仕する仕事の一端を担う事で社会貢献したい」というような回答になるかと思います。
【4象限マトリクス活用例②】プロダクトポートフォリオマネジメント
このように4象限マトリクスは非常に便利で全体を俯瞰するのに役立つツールです。有名な例としてプロダクトポートフォリオマネジメントと呼ばれる、市場成長率と利益率を軸にした4象限マトリクス図が知られています。
技術畑の人はあまりなじみはないかもしれませんが、各種マーケティングなどでは教科書の最初に出てくるような「基本のキ」レベルの内容です。この図を知っている人は多くいても、今回のようなケースで4象限マトリクスを活用できる人はなかなかいないように思います。
4象限マトリクスは2つのパラメータで分かりやすく展開する図
色んな選択肢の中から何かを選択する状況で、なぜその選択が最善なのかを表せます。4象限マトリクスで分かりやすく分析・表現するためには、分析対象の違いがよく分かる2軸の設定が最も重要です。
対比可能な2軸を設定して説明することがこのツールの本質です。この2軸の設定はちょっと経験が必要かもしれません。しかし4象限マトリクスで説明できる可能性が頭に浮かべば、自ずと最適な2つのパラメータは思い浮かぶでしょう。
上手く活用すれば企業分析にも有効なツールなので、投資家は是非マスターしておくべき分析手法だと考えます。ビジネスマンにとっても出番はそう多くはないかもしれませんが、いざというときに使えるよう自分の引出しに入れておきたいところです。
今回つらつらと公務員の志望動機を考えてみたわけですが、仕事、プライベートとも利益追求しか頭にない僕は公務員に向いていないことがよくわかりました。どんなに血迷っても、間違って公務員に転職しないようにしなれけばいけませんね。
仕事ではツールを有効活用することは勿論ですが、効率的に知識をインプットするのも大事です。我流ではなく科学的な方法で効率アップを図りましょう。
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