粉体の沈降理論式で登場するストークスの(沈降)式。式を覚えておけばとりあえず実務では使えますし、公害防止管理者水質の試験で正答はできます。技術者として原理原則を押さえておきたいのに意外と説明が少ないですよね。物理が苦手で苦戦した筆者が、ストークスの式とその導出について解説します。
1. ストークスの式とは
ストークスの式はストークスの終末沈降速度式、ストークスの沈降式などとも呼ばれます。乱流のない流体中に存在する粒子が沈降するときの終末沈降速度を示し、次の式で表現されます。
化学工学特有の式で、馴染みのない人は取っつきにくいかもしれません。粉体スラリーを扱う人にはお馴染みの式ですね。
ストークスの式は球状粒子の重力、浮力、抵抗のつり合い
遠心沈降速度も頻出ですね。
2. ストークスの式の導出
ストークスの式は球状粒子の重力、浮力、抵抗のつり合い。というわけでつり合いの式と流体抵抗の式からストークスの終末速度沈降式を導出します。
2-1. ストークスの式は球状粒子の重力、浮力、抵抗のつり合い
ストークスの式の本質は、流体中の粒子そのものの重力、粒子に作用する浮力、粒子の沈降に対する抵抗のつり合いを示した式です。
2-2. 粒子の流体抵抗を流体粘度、粒径、粒子の相対速度で表現しよう
粒子の流体抵抗FRは、抵抗係数CD、粒子の投影面積A、粒子密度ρp、粒子の相対速度Vすると、式②で表現できます。
式②は実験式で、粒子の運動エネルギーと投影面積、係数で表される単純な式ですね。
次に抵抗係数CDは慣性力と粘性力の比で表されるレイノルズ数(式③)で表され、乱流が生じていないstokes域(Re<6)では実験式④で表されます。
式②に式③、式④を代入すると、球状粒子の投影面積はA=(Dp/2)2πなので、流体抵抗が流体粘度μ、粒子径Dp、粒子の相対速度Vとして式⑤で書けます。
物理が苦手だった僕はここまで来るのも一苦労です。慣れている人ならなんてことないと思います。
2-3. 粒子に働く浮力を粒子質量、流体密度、粒子密度で表現しよう
粒子の浮力は重力から密度差影響を差し引いたものなので、流体密度ρfとすると式⑦で表現できます。
2-4. 球状粒子の重力、浮力、抵抗のつり合い式に代入する
さて、2-1で登場した重力、浮力、流体抵抗のつり合い式を思い出してみましょう。
流体抵抗FRとして式⑤、浮力FBとして式⑦、それぞれを式①に代入して整理すると、終末沈降速度は式⑨として表現できます。
終末沈降速度は速度変化がゼロとなった時の速度、つまりdv/dt=0となったときの粒子速度を表します。したがって、これを式⑨に代入すると終末速度Vは式⑩で表されます。
粒子の質量mは粒子密度ρp、粒子径Dpを用いて式⑥で表されます。球の体積に密度かけるだけの理論式ですが、粒子径が直径なので化学工学慣れしていない人はとっつきにくいかもしれません。
この式⑨を式⑧に代入して整理すると、ストークスの終末速度の式が得られます。
比較的単純に導出できるので、しっかり理解しておきたいですね。特に物理が苦手だった人は思わぬところで役に立つかもしれません。
3. 【公害防止水質共通】ストークス式の計算問題
3-1. 【例題①】懸濁液の沈降速度を求める計算問題例
これは式が与えられているので単純に代入して計算するだけですね。答えは②です。
3-2. 【例題②】懸濁液の沈降速度から沈殿池長さを求める計算問題例
ストークスの沈降式は必ず式が与えられるとは限りません。本問は式が与えられていませんが、⓪の式に代入して、粒子の除去率が60%になる長さを推定すればよいだけですね。答えは⑤です。サービス問題なので、式は確実に覚えておきましょう。
4.【公害防止水質頻出】ストークス式は球状粒子の重力、浮力、抵抗のつり合い
ストークスの沈降式は球状粒子の重力、浮力、抵抗のつり合いから導出できます。式は複雑ですが導出をしっかりしておけばすんなり頭に入ってきやすいと思うので、是非しっかり理解しておきましょう。
ストークスの終末沈降速度式は公害防止汚水処理特論で頻出の式です。知らない問題もたくさん出題される公害防止管理者試験では、頻出問題を確実に解くためにも確実に正答しておきたいですね。
偉そうに解説してますが、公害防止管理者大気1種は2回落ちてます。2021年は残した大気1種1科目と合わせて水質も科目合格を狙いたいものです。
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