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企業分析

【大手4社徹底比較】プラントエンジなら栗田工業【御三家は厳しい】

2021-01-26

プラントエンジニアリング国内大手4社(日揮、千代田化工、東洋エンジ、栗田工業)の15年間推移を、素材業界所属の筆者が徹底比較します。投資先としても勤務先としても御三家は揃って厳しく、業界4位から3位に浮上した栗田工業が有望です。

プラントエンジ業界は地味な素材業界よりもさらに地味な業界。縁の下の力持ち的存在素材メーカーですが、素材を作るプラントの設計~竣工までやるエンジニアリング会社がないと成り立ちません。歴史は繰り返されるという考え方から、本記事ではリーマンショック前後を含む過去15年間の推移での比較としました。

株式投資を検討されている方だけでなく、就職や転職を考えている方もどうぞ。

目次

1.プラントエンジニアリングとは
2.プラントエンジニアリング企業の分類
 2-1.プラントエンジニアリング専業大手3社
 2-2.プラントエンジニアリング主要10社
 2-3.プラントエンジニアリング企業の様々な分類
3.プラントエンジニアリング大手4社を徹底比較
 3-1.比較①:株価推移
 3-2.比較②:自己資本比率の推移
 3-3.比較③:売上高の推移
 3-4.比較④:従業員1人当たりの売上高推移
 3-5.比較⑤:海外売上比率の推移
 3-6.比較⑥:従業員1人当たりの営業利益推移
 3-7.比較⑦:従業員の平均年収推移
4.プラントエンジニアリング大手4社の財務比較
 4-1.日揮 ~業界最大手で賢く儲ける~
 4-2.千代田化工建設 ~資本関係にある三菱商事の目の上のたんこぶ~
 4-3.東洋エンジニアリング ~三井物産からも見放される~
 4-4.栗田工業 ~水処理特化のグローバルニッチトップへ~
5.結論:プラントエンジ業界は栗田工業が有望

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1. プラントエンジニアリングとは

Photo by てる

プラントエンジニアリングとは、素材をつくる設備であるプラントの設計から竣工まで実施する業態のことを指します。石油化学やLNGなどの資源系プラントが最も印象的ですが、鉄鋼・非鉄金属・セラミックスなどの製造設備をつくるのもプラントエンジニアリングですね。

素材メーカーとはそもそも何ぞやという事に関しては、こちらの記事をどうぞ。

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筆者は素材メーカー所属の素材開発エンジニアでありプラントエンジニアリング企業所属ではありません。しかし素材系企業の設備部門にも「プラントエンジニア」は在籍していて、自社のプラントエンジニアリングをやっています。化学系・土木系・機械系・電気系の各エンジニアが協力してプラントを作ります。各エンジニアの主な分担は以下の通りです。

  • 化学系エンジニア:化学反応などの製造プロセス面から安定操業可能な製造プラント要求仕様への落とし込み
  • 土木系エンジニア:更地から基礎工事を経て建屋を作るまでの設計
  • 機械系エンジニア:プロセスだけでなく安全性・耐久性を考慮した具体的機械仕様への落とし込み
  • 電気系エンジニア:電気周りのインフラ整備から、安定操業可能なプラント制御系をシステム構築

これを大規模なスケールでやっているのがプラントエンジニアリング専業業界ですね。比較的小さなものでも数千万円規模、大規模なものだと数千億円規模になります。

2. プラントエンジニアリング企業の分類

プラントエンジニアリング企業は上場区分では建設業界に分類されることが多いです。しかし一口にプラントエンジニアリング企業と言っても様々なカテゴライズができます。規模や時価総額などでは専業大手3社、主要10社、事業形態ではEPC、サブコン、工事会社などの分類があります。

2-1. プラントエンジニアリング専業大手3社

プラントに特化して設計、調達、建設を一貫して請け負っているのがプラントエンジニアリング専業会社です。中でも業界トップ3の日揮(東証1963)、千代田化工建設(東証6366)、東洋エンジニアリング(東証6330)は御三家とも呼ばれますね。

2-2. プラントエンジニアリング主要10社

主要10社というくくりもあります。建設業界ニュースサイトbuilt.itmediaでたびたび使われている括りですね。栗田工業(東証6370)、タクマ(東証6013)、レイズネクスト(東証6379)、メタウォーター(東証9551)、太平電業(東証1968)、富士古河E&C(東証1775)、田辺工業(東証1828)の7社に専業大手3社に加えた10社のことを指します。

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2-3. プラントエンジニアリング企業事業形態による分類

プ-ラントエンジニアリング企業には、事業形態に応じて様々な分類があります。大きく分けてEPC、サブコン、工事会社の他、メーカー系や商社系などの分類があります。本記事はIRデータの推移比較なので、事業形態について詳細は割愛します。

主な事業形態は以下の通りです。具体的企業名や掘り下げた解説などもあるので、ご興味のある方はどうぞ。

EPCはEngineering(設計) Procurement(調達) Construction(建設)の略称で、プラントの建設工事を一括で行う企業です。

サブコンはプラントの建設を一括ではなく、空調、排水設備など一部の設計、施工を請け負う業者を指します。

工事会社はサブコンやEPCなどから依頼を受け、図面をもとに実際に配管などの工事を行います。(中略)工事がメインですがそれだけをやっているわけではありません。

引用元:エネ管ドットコム

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3. プラントエンジニアリング大手4社を徹底比較

プラントエンジニアリング大手4社を徹底比較します。プラントエンジニアリング専業3社である日揮(2019年度売上高4472億円)、千代田化工建設(同2471億円)、東洋エンジニアリング(同2191億円)に加えて、コロナ下でプラント業界売上高3位に浮上した栗田工業(同2648億円)を筆者独断で加えて徹底比較しました。

3-1. 比較①:株価推移

リーマンショック後の底値付近である2009年2月を100としたときの指数で表して比較してみます。リーマンショック前後を含めた過去15年間の推移を見てみましょう。

プラントエンジニアリング大手4社(日揮、千代田化工建設、東洋エンジニアリング、栗田工業)の2005年から2020年までの長期株価推移の比較を示した図。
S-ゆうぞう作成

ベンチマークとして日経225平均も入れてあります。浮き沈みが激しすぎるので対数目盛表記とさせていただきました。2020年12月現在(グラフ右端)、残念ながら日経平均から全社ぶっちぎりでアンダーパフォームです。

2009年2月を100としたとき、2020年12月現在で日経平均333に対して業界最大手の日揮でさえ71。日経平均の20%程度です。コロナショックで大きくダメージを受けた格好ですね。

一方で業界万年4位だった栗田工業はコロナショックでも業績への影響は軽微で、2020年12月現在では4社の中ではトップです。業界売上高と株価に顕著な相関はみられません。

3-2. 比較②:自己資本比率の推移

重要な財務指標の1つ、自己資本比率を確認します。財務状況の健全性を見る指標の一つで、全体資産のうち返済不要の自己資本の割合を示したものです。この値が高いほど財務が健全で堅実経営であることを示します。逆に低い場合にはたくさん借金をしてレバレッジの高いチャレンジングな経営をしていると言えます。

プラントエンジニアリング大手4社(日揮、千代田化工建設、東洋エンジニアリング、栗田工業)の2005年から2020年までの自己資本比率推移の比較を示した図。
各社有価証券報告書からS-ゆうぞう作成

業界最大手の日揮に加えて業界内プレゼンスを上げている栗田工業が高位安定ですね。特に日揮は数千億円規模のハイリスクプロジェクトを抱えているという事情を考慮すると、かなり賢いビジネスを展開していることが予想できます。栗田工業は専業大手3社とは異なるビジネスモデルですが、ニッチな業界で手堅く展開していると言えそうです。

一方で業界2位の千代田化工は2018年度に債務超過(=自己資本比率がマイナス)になっています。2019年8月に東証1部から2部への格下げの憂き目にあいながら、第三者割当増資で三菱商事から700億円資金注入で救済された形ですね。2008年の自己資本比率UPも三菱商事からの第3者割当増資で600億円資金注入が効いていますし、2001年、1994年にも増資を繰り返している歴史を持ってます。自己資本比率の数字だけで騙されてはいけません。

業界4位に転落した東洋エンジニアリングの自己資本比率は低位安定ですね。2006年の増資で三井物産から救済されたものの、2019年には大株主の三井物産に増資引き受け拒否。日系投資ファンドのインテグラルから150億円の第三者割当増資でなんとかキープしているという状況ですね。千代田化工もそうですが、数字だけ見ると潰れないのが不思議なくらいです。

プラント業界は建設業であり、製造業とはずいぶん様相が異なりますね。投資家目線ではハイリスクローリターン、変動は製造業よりもはるかに大きいと言えそうです。

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3-3. 比較③:売上高の推移

3-3-1. 連結売上高の指数化による比較

2005年度の売上高を100としたときの推移を確認します。専業大手3社の浮き沈みは激しく、売上高が平気で倍半分とかになっています。業態故なのでしょうが、経営陣も生きた心地はしないでしょう。

プラントエンジニアリング大手4社(日揮、千代田化工建設、東洋エンジニアリング、栗田工業)について、2005年度を100としたときの2005年から2020年までの売上高比率の相対値推移の比較を示した図。
各社有価証券報告書からS-ゆうぞう作成

一方で栗田工業は専業大手3社とは異なる水ビジネスに特化した展開で堅実に売上を伸ばしていますね。

3-3-2. 連結総売上高の絶対額比較

連結総売上高の絶対額推移も合わせて載せておきます。随分景色が変わりますね。他業界でも売上高と企業の未来は必ずしも一致しませんが、プラントエンジ業界はその傾向がより顕著化かもしれません。

プラントエンジニアリング大手4社(日揮、千代田化工建設、東洋エンジニアリング、栗田工業)について、2005年から2020年までの連結売上高推移の比較を示した図。
各社有価証券報告書からS-ゆうぞう作成

業界2位の千代田化工、業界4位転落の東洋エンジの業績は惨憺たる状況ですが、業界3位浮上の栗田工業は売上こそ地味ながらも着実に伸ばしてきて来ます。一方で日揮は浮き沈みも大きいですが売上高だけ多いわけでもないので、やはりダントツで優秀な人材を抱えたビジネス展開をしているのでしょう。

特に日系プラント業界は世界的には小ぶりなので売上以外にも様々な指標を確認することをお勧めします。なおENR-2020-int-Contractors-2020によると、国内1位の日揮でさえ世界の建設業界では46位、千代田化工は49位、東洋エンジは66位です。国内大手だからと言って投資妙味があるとは限りません。

業界分析は投資を検討されている方以外にも、就職・転職を検討している方にも必須です。ただ本記事は投資家目線がメインなので、転職を検討される場合にはOpenworkなどで待遇や社風も合わせて確認しておきましょう。

ちなみに僕が転職するときには、株価以外の部分は財務体質を含めてしっかりチェックしていました。業界として拡大が続く中で中途採用も増えていますが、新卒応募でもしっかり企業財務の分析をしておきたいところです。

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3-4. 比較④:従業員1人当たり売上高の推移

従業員1人あたりの売上高推移の比較結果を確認します。労働効率、労働環境などは単なる売上高だけでは見えず、従業員一人当たり売上高を確認することで分かることもあります。ビジネスモデルにも大きく依存する指標なので一概には言えない部分もありますが、一つの指標としてみてみましょう。

プラントエンジニアリング大手4社(日揮、千代田化工建設、東洋エンジニアリング、栗田工業)について、2005年から2020年までの連結1人あたり売上高推移の比較を示した図。
各社有価証券報告書からS-ゆうぞう作成

直近4年間は専業大手3社は同等程度となっていますね。

東洋エンジは2014~2016にかけて1人当たり売上高が急増していますが、2017年度の巨額損失の原因だったりしないのかなと邪推してしまいます。千代田化工も2005~2007の売上げ急増からの2008年度での増資という似た経緯がありました。無理な売上を求めてリスク管理が甘くなっているのでは?ということが推測できる指標だと思ってます。

「売上高」なので検収がずれたりすると大きく変動する可能性はあります。他業界との比較の都合で売上高比較としましたが、単年の受注高で見るともう少し分かりやすいのかもしれません。

次項で触れますが未だ海外比率がそこまで高くなくて堅実な展開をしている栗田工業は、専業大手ほど1人当たり売上は高くないようです。

3-5. 比較⑤:海外売上比率の推移

プラントエンジニアリングと言えば海外、というイメージが強いと思います。特に石油化学プラントなどは中東や北米での大きなコンビナートなどが印象的ですよね。

というわけで各社の海外売上比率の長期推移を追ってみました。専業大手3社は売上の大半を海外が占めていて、公開情報が追える2005年度から既に海外比率は60~85%程度です。またリーマンショックやコロナショックなどの景気後退局面では海外売上比率が下がる傾向も読み取れます。

プラントエンジニアリング大手4社(日揮、千代田化工建設、東洋エンジニアリング、栗田工業)について、2005年から2020年までの海外売上比率推移の比較を示した図。
各社有価証券報告書からS-ゆうぞう作成

一方で水処理特化の栗田工業は国内をベースに徐々に海外比率を上げてきています。海外比率増に伴う業績の伸びが期待できるだけに、現事業展開の延長線上での伸びしろが期待できそうです。

3-6. 比較⑥:従業員1人当たり営業利益額の推移

従業員1人あたりの営業利益額推移の比較結果を見ると景色が一転します。効率的に利益創出しているかという点を確認するために重要な指標です。一般的にはこの値が高いほど稼ぎ方・リソースの使い方がうまく、逆に低い場合には稼ぎ方が下手である可能性が高いです。

プラントエンジニアリング大手4社(日揮、千代田化工建設、東洋エンジニアリング、栗田工業)について、2005年から2020年までの連結従業員1人あたり営業利益額推移の比較を示した図。
各社有価証券報告書からS-ゆうぞう作成

千代田化工は2018年度に従業員1人当たり3800万円もの巨額の営業赤字をたたき出してしまいました。2014年に米企業CB&I社と共同で受注した米ルイジアナ州のキャメロンLNGプロジェクト建設事業での労務費増が大きいです。過剰受注による設計遅れに加え、災害復興工事やシェールガス開発と労働者の奪い合いになり人件費が高騰してしまったことが原因と説明されていますね。

東洋エンジは2017年度巨額赤字はハリケーン被災で、2015年に信越化学から受注した米スチレンプラントが直接的な原因と言われています。自然環境の影響を大きく受けるプラント業界の宿命ともいえる現象ですね。しかし中計で売上至上主義を掲げ、無理な受注でプロジェクト管理が甘くなったことも大きいと考えられます。

ビジネスモデルや競争環境の都合で追加コストを顧客に請求できないという事情も大きいのでしょうが、プラントエンジ業界の闇が見えますね・・・

3-7. 比較⑦:従業員1人当たり平均年収の推移

各社の従業員「平均年収」のデータを比較します。ここが一番気になるという方も多いのではないでしょうか。有価証券報告書をもとに作成しています。

一応データとして載せましたが、あくまで同一会社内での時系列変化のトレンドくらいしかわかりません。製造業と異なり給与体系の異なる「現場」人員は少ないので、本給そのものは製造業よりは実態に近いものが掲載されていると予想できます。

プラントエンジニアリング大手4社(日揮、千代田化工建設、東洋エンジニアリング、栗田工業)について、2005年から2020年までの有価証券報告書記載の平均年収推移の比較を示した図。
各社有価証券報告書からS-ゆうぞう作成

2017~2019年はプラント不況時代で専業3社は不調であること、市況により100万円超上下することが読み取れます。一方で栗田工業はリーマン後はやや減少傾向にありますが減少幅は小さく、その後はほぼ右肩上がりトレンドになっています。この業界で「安定」を求めるならば売上規模を追求しない方がよさそうですね。

なお「平均年収」とは給与・賞与・時間外給与が含まれます。プラントエンジ業界特有のハードシップ手当であったり、出張・駐在手当等は一切含まれていません。

実際には出張・駐在に伴う諸手当をたくさん貰えるのがプラントエンジ業界の特徴であり、可処分所得はもっと高いと予想できます。もっともそれに見合ったハードワークで私生活を犠牲にしていそうですが。

有価証券報告書には記載されていない総合職のみの年収動向は、就職四季報を参考にしましょう。過去3年分が掲載されています。

筆者は素材産業で材料開発エンジニアをやっています。そんな筆者の年収が気になる方はこちらもあわせてどうぞ。

東大卒サラリーマンの年収・資産推移を大公開~大手素材メーカー~|素材さん@東大卒季節労働者|note
東大卒サラリーマンの年収・資産推移を大公開~大手素材メーカー~|素材さん@東大卒季節労働者|note

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4. プラントエンジニアリング大手4社の財務比較

各社の財務状況と事業内訳を確認してきます。財務状況はキャッシュフロー(営業CF、投資CF)と営業利益率、事業内訳は主要分野での売上高の長期推移と海外比率としました。

4-1. 日揮 ~業界最大手で賢く儲ける~

引用元:日揮HP

プラントエンジニアリング国内最大手の日揮、英語名称はJGC corporationですね。建設業なので投資CFは少なく、営業CFと営業利益率に着目します。営業CFは激しく上下するので、特にプラントエンジ業界では単年ではなく長期の積算で見るのが適切です。年度終わりのプラントを検収できるかどうかによっても大きく左右されますし、また天災や想定外の事象で追加コストが膨らんだりすることが多々あるからです。

2014年~2018年は冬の時代ですね。長期プロジェクト特有ですが入金要件が厳しい案件が多いゆえの完成工事未収金増に加えて、工事未払金の減少が重なったようです。また2016年度はシェブロン系米国内プラントにおける多雨・洪水の影響での追加費用で、営業利益自体も赤字になってますね。しかし15年積算で見ると営業利益率は10%に迫っていて、総じて会社としては儲かっていて、大規模かつ賢いビジネスをやっているという印象です。

ただ浮き沈みが激しく、1株当たり利益や配当はかなり落ち込んでいます。株価騰落率も大きいですし、投資先としてはかなり上級者向けと言えそうです。

また事業別売上推移と内訳です。2010年代半ばはLNGブームで大きく伸ばし、これに伴い海外比率も高止まりしてきました。化学プラントはリーマンショック後から低空飛行、石油化学プラントなどのその他資源は比較的安定的な売上げを保っていますね。グラフには表れていませんが、プラント事業以外に触媒・ファイン事業として400~500億円程度、堅実にキャッシュを稼ぎつづけている点も見逃せません

コロナショックで海外案件も停滞し当面は低空飛行しそうですが、致命的な営業赤字を出していない分今後もプレゼンスを保ちそうです。

日揮における、2005年から2020年までの事業内訳(LNG、石油化学などのその他資源、化学プラント、その他)と海外売上比率推移を示した図。
有価証券報告書からS-ゆうぞう作成

有価証券報告書からの財務データ読み取りは中堅クラス以上の社会人にとっては必須のビジネススキルです。筆者は下記の本で勉強しました。基本的な内容が簡潔に網羅されている良書です。

4-2. 千代田化工建設 ~資本関係にある三菱商事の目の上のたんこぶ~

千代田化工建設はなかなか激しいです。CFの浮き沈みも大きく、2018年の大赤字は前述のキャメロンLNGプロジェクトの影響ですね。やむを得ない事情はあったとしても社運をかけて大チョンボをやられてしまうと、投資先としてはなかなか厳しいです。一時的な赤字はやむを得ないとしても、在庫リスクのない業態で10年分以上の赤字を単年で出してしまうのはちょっと考え物です。

千代田化工は元々LNGプラントを強みとしていたにもかかわらず、同事業で大損失という失態。その2年前の2016年度にもLNGプラント事業の一角であるシンガポール・エズラ社傘下のサブシー会社(海底工事を行う事業会社)へ大型出資での失敗があります。

資金力がモノを言うサブシー会社の世界3強である仏テクニップ(時価総額47億ドル、2020年1月現在)、英サブシー・セブン(同29億ドル)、伊サイペム(同26億ドル)、の次の座を狙って攻めざるを得ない事業環境であったのも理解はできます(千代田化工建設は同9億ドル)。原油価格の大幅下落という厳しいイベントも加わってしまったのは不運でしたが、もう少しリスクヘッジする手立てもあったように思えます

2019年の増資を引き受けた三菱商事も2008年に資本引受けしてしまった手前、やむを得ず泥沼にはまっている様子。大株主の三井物産から見放された東洋エンジよりはマシかもしれませんが。LNGブームがひと段落した今、どこで三菱商事の出資資本を回収するのか気になる所です。

千代田化工における、2005年から2020年までの事業内訳(LNG、石油化学などのその他資源、化学プラント、その他)と海外売上比率推移を示した図。
有価証券報告書からS-ゆうぞう作成

4-3. 東洋エンジニアリング~三井物産からも見放される~

プラントエンジ大手の中でもダントツ最下位の自己資本比率である東洋エンジニアリングもなかなか厳しいです。

2014年度はブラジル半官半民石油企業のペドロブラス社関連、インドネシアの国営肥料会社カルティム社の他、加オイルサンドや米石油化学プロジェクトなどでの複数海外案件の赤字が積み上がったもの。もちろん一発アウト系も闇は深いですが、東洋エンジの場合同時期に複数案件で巨額損失計上です。EPC業態(設計、調達、建設を一貫して請け負う)のプロジェクトマネジメントが不十分と予想され、プラントエンジ業態の根幹を揺るがす失態としか言えません。

2017年度の大赤字は米国ハリケーン被災なので気の毒ですが、天災リスクはプラントエンジ業界にはつきもの。筆者は素材業界所属なので外部から見た無責任な感想ですが、もう少しダメージを軽減するリスクヘッジも出来なかったものなのでしょうか。

他のプラント専業大手同様海外比率は高止まり傾向にあり、こうしたリスク管理やヘッジは社運に関わる重要事項です。大株主である三井物産の出資見送りということもあり、先行きはかなり厳しいのではないでしょうか。今後の行方が気になる所です。

東洋エンジニアリングにおける、2005年から2020年までの事業内訳(石油化学などの資源、化学プラント、その他)と海外売上比率推移を示した図。
有価証券報告書からS-ゆうぞう作成

4-4. 栗田工業 ~水処理特化のグローバルニッチトップへ~

本記事でプラント専業大手3社とは別枠として、プラント業界の次点エースとして筆者が独断で選んだのが栗田工業。EPC業態ではなく一般的知名度は高くありませんが、水処理関連のプラント業界では存在感を持っています

キャッシュフローや営業利益率を見ても他のプラント大手と比較してかなり優秀であることがわかります。

特筆すべきなのは水処理装置だけでなく、付随するメンテナンスを含めた水処理薬品事業も合わせて事業成長させている点です。直近投資CFが増えているのは気になりますが、財務体質も良好ですしIRはExcellentです。2021年1月現在で株価もPER26倍程度とやや割高ですが、事業成長率を加味するとお買い得なのかもしれません。

栗田工業における、2005年から2020年までの事業内訳(水処理装置、水処理薬品)と海外売上比率推移を示した図。
有価証券報告書からS-ゆうぞう作成

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5. 結論:プラントエンジ業界は栗田工業が有望

今回は気合を入れて国内プラントエンジ大手4社の徹底比較をしてみました。EPC専業大手3社の日揮、千代田化工建設、東洋エンジニアリングを横目に、ニッチ分野ながら水処理関連に特化している栗田工業が投資対象としては有望に見えます。

また千代田化工建設・東洋エンジニアリングはかなり曰くつきという事もあり、投資不適格で投機対象となる水準と思われます。また内部で働くのもそれなりの覚悟が必要でしょう。

日揮は直近低迷していますが、停滞期を乗り切った後の巻き返しを期待したいところですね。

プラントエンジ主要10社についてもIR情報をまとめました。ご興味のある方はあわせてどうぞ。

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筆者は素材産業所属なのでプラントを使うオーナー側です。あまり実情がわかっていないため詳しく書けませんでしたが、下記記事では業界所属エンジニアがプラントエンジニアリング産業について詳しく説明されています。

【業界研究】プラント業界とは?詳しく徹底解説します - エネ管.com
【業界研究】プラント業界とは?詳しく徹底解説します - エネ管.com

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  • この記事を書いた人

素材さん

東大卒を活かせてない経歴の社畜。工場勤務のヒントを綴ります。転職、結婚、資産形成、資格取得、仕事感。共通点ある方のヒントになれば幸いです。 転職1回目で僻地突入、転職2回目で僻地脱出。/30代前半/東大卒(学部・院)→中小→大手JTC→超大手JTC/素材開発エンジニア/既婚/3人兄弟の真ん中

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