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【実録徹底解説】水泳用ゴーグルの寿命は3年

2021-01-06

スイマーの数少ない相棒の一つであるゴーグル。水着ほど短命ではありませんが、消耗品で買い替え頻度の高いアイテムの一つです。

実体験での競泳用ゴーグルの寿命を紹介します。また素材開発エンジニアとして、ちょっとマニアックにゴーグルのレンズとゴムに関する劣化メカニズムにも触れてみました。このメカニズムは水泳用に限らず、スキースノボ用ゴーグルでも全く同じです。スキースノボ用ゴーグルの劣化でお困りの方もあわせてどうぞ。

1. 水泳用品のグッズは短命

水泳用水着の寿命は一般的に80~100時間と言われ、水泳用品3点セットの中では最も短命ですね。ではゴーグルは如何でしょうか。

体感的には水着ほど買い替えないイメージですが、そこそこ泳いでる人でゴーグルを5年買い替えない人もいないのではないでしょうか。

使用頻度や環境・保管方法・お手入れ方法で大きく変わると言われていますが、実際どれくらい持つものなのでしょうか。

1-1. 【寿命の前提】ゴーグルの使い方・お手入れ方法

一口にゴーグルの寿命と言っても、使い方の前提条件で大きく変わるでしょう。というわけで前提条件です。

①YASUDA製YG-497:既に寿命を全うしました。以前使っていたゴーグルはAmazon単品販売で当時最も安かった
②VIEW製SWIPE V630SA:今使っているゴーグル。もうすぐ寿命を迎えますが、ゼビオスポーツでそこそこ安いのを買いました。

水泳歴6年ですが、1つ目は水泳を始めて一番最初に使っていたゴーグルです。当時は平均週2回ペースでだいたい300~1000m/回くらい泳いでました。クロールで25mを50秒くらいのペースで休み休み泳いでいた感じですね。終わったらそのままスイムバッグに入れて放置。所謂使いっぱなしですね。

2つ目は寿命を迎えて買い替えたゴーグルで、平均週3回ペースで1.5km/回くらい泳いでました。ペースも随分あがり25mを26~30秒程度のペース、休憩なしで泳いでいました。終わったら毎回水道水で軽くすすぎ洗いしてスイムバッグへ。すすぎ洗い以外は特に何も気にしていませんでした。

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1-2. 【寿命】期間で3年くらい、距離は依存性なし?

1-2-1. 1代目は3年3か月でストラップのゴム断裂

1個目のゴーグル(YG-497)は3年3か月で使用不可になって交換。数か月でレンズが曇るようになりました。安物だから仕方ないですね。それほど距離も泳げなかったので、都度プールの水ですすいでくもり取りすれば特に問題はありませんでした。

2年半くらいストラップのゴムが伸びてきて緩みやすくなりました。勿体ないので長さ調整部分を結んで緩まないようにして使ってましたが、次はクッションの部分が緩くなってきて、キツく締めないと水が中に浸水するように。それでも耐えて使ってたのですが、3年でそのストラップのゴムが切れてお亡くなりに。使用期間は2014年5月~2017年7月くらい、遊泳距離は不明ですがまだそんなに泳げなかったので大して使ってないと思います。

1-2-2. 2代目は3年5か月でクッションから浸水

2個目のゴーグル(SWIPE V630SA)は1年くらいでレンズが曇るようになりました。流石に1km以上泳ぐとちょっと辛いのですが、そういうもんだと思って使ってました。最近は300mくらいで曇って全然見えません。こうなると経験上くもり止めも殆ど効がないので、そろそろ交換時期なのかもしれません。

使用期間は2017年8月~2021年1月、使用期間は約3年半遊泳距離は累積500km弱、遊泳時間は累積約35時間です。遊泳時間は途中休憩やクーリングタウン時間を考慮しても約50時間といったところでしょうか。

1-2-3. 購入してからの経年劣化依存か

結局遊泳距離や時間とはあんまり関係なくて、僕の場合は2個とも3年ちょっとで寿命を迎えました。水着よりは3~4倍長持ちしますが、それでもヘビーユーザーにとっては消耗品ですね。

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2. そもそもゴーグルの寿命って何?

何を以て寿命と判断するかは人それぞれですが、僕の偏見で4段階の寿命を勝手に設定します。どこで区切るかは人それぞれです(笑)

  • レンズがくもりやすくなった
  • ストラップが伸びて緩みやすくなったとき
  • クッションから水が浸入するようになったとき
  • ストラップが切れてしまったとき

2-1. 【寿命①】レンズがくもりやすくなった

水泳用ゴーグルで一番最初に劣化を感じるのは、レンズが短時間で曇るようになることですね。最近は高耐久性などを謳った商品も多いですね。実際に僕が使っていた2個でも、くもりが気になるまでの時期が数倍くらいの違いがありました。2~3か月と1年という程度の違いですけどね。

特に混雑したプールが主戦場で泳ぐスピードが速い方は、同じレーンを泳ぐ人が見えにくくなって不便を感じやすくなりますね。安全上レンズが曇りやすくなったタイミングで交換した方がいいかもしれません。

僕は片田舎で営業時間終了間際に泳いでるので、壁掛けの時計が見えなくなってラップタイムをタイムリーに把握しにくくなるくらいです。

水泳用ゴーグルのレンズが曇って見えなくなる時計

僕はラップタイムのタイムリーな把握は重視しておらず、心拍数や長距離タイムが気になる派なのであんまり気にしてません。ちなみに泳いでいるときの心拍数や長距離タイムはGarmin swim2を使って把握しています。感動します。よろしければレビューも合わせてどうぞ。

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2-2.【寿命②】ストラップが伸びて緩みやすくなったとき

これも良くあるパターンですが、ストラップが緩みやすくなった時も寿命です。僕の場合、緩みやすくなった後もゴーグルの長さ調整部分を結んで物理的に緩みにくくして使ってました。プールって殆ど水中で泳いでいれば人目にもつかないので、思ったほどみすぼらしくはありません。そんな貧乏じゃないんだから買い替えなよって話なんですが、生まれつきの貧乏性の性です。

水泳用ゴムが緩みやすくなった時の応急処置

2-3.【寿命③】クッションから水が浸入するようになったとき

次に気になるのがゴーグル内側への水が入ってくることですね。クッション部分もゴム製なので、ストラップ同様に劣化は進みます。経験上、ストラップのゴムをきつく締めておけばある程度は誤魔化せます。

キツく締めても水が入る、痛くてこれ以上ストラップゴムを締められないという場合は寿命なので諦めて買い替えましょう。

2-4.【寿命④】ストラップが切れてしまったとき

ここまで使い込んだことはありません。さすがに救いようがないので交換しましょう(笑)

3. 水泳用ゴーグルの劣化①:レンズのくもり

ゴーグルの劣化でレンズがくもるようになるのはどうしてでしょうか。メカニズムも含めて少々マニアックなことも書いたので、概要のみ知りたい方は太字部分に注目して読んでみてください。

3-1. 新品のゴーグルがくもらない理由

新品のゴーグルは結露で水滴ではなく薄い水膜が出来るような特殊コーティングがされてます(参考:東海光学Vol.39 「新しい曇りにくいレンズの実力」)。このため曇りません。

新品のゴーグルが曇らない理由を示した図。目と皮膚から汗の水蒸気が出て、飽和水蒸気で満たされる。この飽和水蒸気からレンズ表面に水膜として凝縮され、水膜が厚くなる。
コーティングされたゴーグルが曇らないメカニズム

もしコーティングがなかったとしたらどうでしょうか。本来は長時間ゴーグルを着装し続けると、レンズ内部は皮膚からの蒸発した過飽和水蒸気で満たされてきます。またレンズ内部は体温で温められているのに対し、レンズ表面はプールの水で冷やされている状態です。この温度差により冷たいレンズ表面に結露します。つまりゴーグル表面に非常に細かい水滴(水玉)が出来て、「くもり」になります。

3-2. 【レンズがくもる理由①】汚れ付着

もしゴーグルの内側に汚れが付着していた場合、レンズはくもりやすくなります。使用期間が長くなると汗に混じって出てくる汚れた蒸気やプールの水でだんだん細かな汚れが付いてくるので、くもりやすくなってしまいます。

汚れが付いたレンズがくもるメカニズムを示した図:汚れを核として水滴が付着してくもる。
汚れが付いたレンズが曇るメカニズム

レンズに汚れが付着していた場合、この汚れを核として過飽和水蒸気が凝縮されて細かな水滴が形成されます。この結果水滴で光が乱反射されてしまい、視界が悪くなります。つまりレンズが「くもり」ます。

くもりが気になった場合は一度ウェスで優しく拭くことで改善されるかもしれません。傷つけないように優しく拭くことがポイントですが、不用意に傷を作らないように必要がなければレンズに触れないのが最もいいでしょう。

3-3. 【レンズがくもる理由②】細かなキズ

もう1つのくもりの原因はレンズ内部の細かなキズです。キズで表面の凹凸が増え、きれいな水膜ができにくくなります。この結果大きな水滴がたくさん付着してくもってしまいます。

キズが付いたレンズがくもるメカニズムを示した図:傷を起点として大きな水滴が付着してくもる。
キズが付いたレンズが曇るメカニズム

またキズ自体があることで汚れが付着しやすくなります。また凹凸に細かな汚れが入り込んでしまい、ふき取っても汚れを除去することが難しくなります。キズは汚れの原因になるため、さらにくもりやすくなるのですね。

こうなってしまうと市販のくもり止めはほとんど役に立たなくなります。全く効果がないわけではありませんが気休め程度にしかなりません。

高価なゴーグルの場合、さらに進化した特殊コーティングのレンズで汚れや傷がつきにくくなっているものが多いですね。

4. 水泳用ゴーグルの劣化②:ゴムの劣化

4-1. 【ゴム劣化理由】オゾン・光でゴムが分解されるため

ストラップやクッションはゴム製なので、材質によっては空気中に含まれるオゾンや光の影響で時間経過とともに劣化が進み亀裂が入ります。この結果伸縮性がなくなって伸びやすくなります。

特に天然ゴム、SBRゴム(スチレン-ブタジエンゴム)は安価なのですが、劣化は早い傾向にあります。天然ゴム、SBRゴムは構造中に炭素二重結合をたくさん含むのでオゾン・塩素・光による酸化反応の影響を大きく受けるためです。直射日光に当てるのは寿命を縮めるのでお勧めしません。

SBRゴムの科学構造式とオゾン分解によってパーオキサイドが生成してカルボン酸まで分解されるメカニズムを示した図。
SBRゴムのオゾン分解

余談ですが天然ゴムの場合、アレルギーで肌がかゆくなったりする人もいるようです。参考までにゴム劣化の詳細については、共和工業株式会社HPが分かりやすいです。

シリコーンゴムの劣化・老化現象は著しく遅く耐候性に優れています
シリコーンゴムの劣化・老化現象は著しく遅く耐候性に優れています

他のゴムと比較して著しく劣化・老化スピードが遅いのがシリコーンゴムとなります。耐候性に優れていて自然劣化はほとんどしません。シリコーンゴムの劣化・老化は外部要因によることが多く、超高温劣化や溶剤劣化、 ...

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4-2. 【ゴム劣化対策】シリコーンゴムなら劣化しにくい

やや高価ですがシリコーンゴムなら、長持ちします。天然ゴムやSBRゴムと異なりオゾンや光による酸化の影響を受けないからです。シリコーンゴムは単純なSiとO元素の共有結合からなり、分解されやすい炭素二重結合をもたないからです。少々お高いのですが、それでも数百円程度の違いです。

ゴムの劣化を考えるとシリコーンゴムの方が長持ちします。使い方や寿命判断によってはレンズの方が先に交換時期を迎えることになるので、レンズの寿命や好みに合わせて選ぶのがよいでしょう。

5. ゴーグルの寿命は数か月~3年程度

気になる競泳用ゴーグルの寿命は数か月~3年程度と幅があります。どこまで許容できるかによって違いはありますが、寿命はおおむね次の通りでしょう。

  • ちょっとでも曇ったら交換する人は数か月~1年、安価な天然ゴム製がオススメ。
  • 多少のくもりが許容できる人なら3年程度、シリコーンゴム製がオススメ。

ゴーグルは水着ほど頻繁に買い替えるものではないので、気になった時に買い替えましょう。楽しい水泳ライフを楽しんでください

  • この記事を書いた人

素材さん

東大卒を活かせてない経歴の社畜。工場勤務のヒントを綴ります。転職、結婚、資産形成、資格取得、仕事感。共通点ある方のヒントになれば幸いです。 転職1回目で僻地突入、転職2回目で僻地脱出。/30代前半/東大卒(学部・院)→中小→大手JTC→超大手JTC/素材開発エンジニア/既婚/3人兄弟の真ん中

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