スイマーの数少ない相棒の一つである水着。実体験から水着の寿命を、期間、距離、遊泳時間の3つの視点から数値化してみました。
水着は消耗品で意外と長く使えないんですよね。また素材開発エンジニアの視点で、水着の寿命を延ばす注意点と劣化メカニズムについても解説します。
1. 水泳用水着の寿命は約100時間と言われるが…
水泳用水着の寿命は80時間とも100時間とも言われます。ここでの水着はプールでしっかり泳ぐためのものを想定しています。海水浴やレジャープールだとここまで使い込むこともないでしょう。
水泳用水着の寿命は一説によるとメーカー公表値が100時間であることが多いです。使用環境や扱い方で大きく変わると言われていますが、実際どれくらい持つものなのでしょうか。
1-1. 【寿命の前提】水着の使い方・お手入れ方法
一口に水着の寿命と言っても、使い方の前提条件で大きく変わるでしょう。というわけで前提条件です。購入した水着は競泳水着セールNo.1、コスパ抜群のSPALTAXです。
水泳歴6年、平均週3回ペースでだいたい1.5km/回くらい泳ぎます。クロールで25mを26~27秒くらいのペースで25往復します。元気があるときはバタフライ、平泳ぎ、クロールで50mを何本か追加し、1往復水中を歩いてクーリングダウン。
遊泳中はほとんど休憩を挟まず、泳ぎ終わったらクーリングダウンだけしてプールから上がります。壁際で水着を擦ったりすることもほぼありません。ちなみに壁際で水着を擦ると繊維が切れて水着の劣化が加速されるので要注意です。
使用後は水道水で3回くらい濯いだ後、手でしっかり絞って水切りしてから自宅で陰干ししています。後で触れますが、この力強く絞るのは良くなかった可能性が高いです。
大人になってから水泳を始めました。レベル感なども含めて気になる方はこちらも合わせてどうぞ。
大人になってから始める水泳【社会人】
子どもの頃にスイミング教室に通っていた人にはなじみのある水泳。だからこそ大人になってから始めるにはハードルが高いもの。 筆者は社会人生活が始まった20代半ばから25mが泳ぎ切れないところから始めて、7年経った今では水泳を趣味として続けることが出来ています。小学校の授業以来泳いだことのなかった筆者が、カナヅチから水泳を趣味にするまでの軌跡を綴ってみました。社会人になってから水泳にチャレンジしたいと思っている方にとって、一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。 1. 社会人までの水泳歴 1-1. 小学校時代: ...
1-2. 【寿命】期間なら10か月、距離なら200km、遊泳時間なら12時間
水泳歴6年で4着目の水着がつい先日寿命を迎えました。2020年1月発売のGarmin swim2で遊泳距離と時間は正確に記録してあります。
使用期間は2020年2月~12月、遊泳距離は累積200km、遊泳時間は累積約12時間です。遊泳時間は途中休憩やクーリングタウン時間を考慮しても約15時間といったところでしょうか。思ったより短いですね。
ちょっとお高いですが、しっかり泳ぐ方にはGarmin swim2がオススメ。感動します。よろしければ発売日に購入して使用したレビューも合わせてどうぞ。
garmin swim2を使ってみた~水泳を科学する~
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2. そもそも水着の寿命って何?
何を以て寿命と判断するかは人それぞれですが、僕の偏見で4段階の寿命を勝手に設定します。どこで区切るかは人それぞれです(笑)
2-1. 【寿命①】生地表面に毛玉が多数できる
水着を使っていて一番最初に劣化を感じるのは、水着の表面に毛玉状の微小な突起が多数できる状態です。俗に「粉吹き」とも呼ばれますね。下の写真でいうと白っぽくなっている部分ですね。お尻と太ももの付け根、裾の部分が傷みやすいんでしょうか。写真は白っぽいですが、黄色い場合もあります。
水着の繊維であるポリウレタンの糸が局所的に切れて、毛玉のようになっているイメージですね。この外観での劣化は一番最初にやってきますが、外観だけの問題ならまだまだ使えます。気持ち悪いという人はここで寿命としてもよいでしょう。
2-2.【寿命②】水着の伸縮性がなくなる
毛玉が出来てしばらくするとだんだん毛玉が増えてきます。それでも使い続けていると、ある日突然伸縮性がなくなります。
ピタッと肌に張り付かなくなり、保水性もなくなってしまいます。プールから上がった後多少水気をふき取るだけでは、歩くたびに水が滴り落ちます。
僕の歴代水着を含めて、「寿命」を迎えた水着はこの状態ですね。写真ではよくわからないので載せてません。
2-3.【寿命③】透ける・・・
これはダメですね(笑)男性用だと前側は2重になってたりしますが、1重のものは履いてはいけません(笑)。内側にもう1枚履いて頑張る猛者もいるそうですが、ここまで行けばかなりのものです。
2-4.【寿命④】水着が破れる
ここまで使い込んだことはありません、と言いたいところでしたが先日穴をあけました。やはり使用開始から1年弱くらいで、プールの隅で休んでいた時にプール側面のコンクリート突起にやられてしまったようです。サイズにして1cm弱ですが、プールから更衣室までの移動時に肌がガッツリ見えるので恥ずかしくて交換しました。さすがに救いようがないので交換がお勧めです(笑)
3. 水着の寿命を延ばす4つの注意点
水着を劣化させないためには、使い終わった後の水着のお手入れも大事です。ここでは科学的根拠も合わせてお手入れの注意ポイントを解説します。少々マニアックなことも書いたので、概要のみ知りたい方は太字部分に注目して読んでみてください。
3-1. 【注意点①】真水でしっかり濯ぐ
塩素が残っていると水着の繊維の劣化が進みやすくなります。プールでは多くの塩素が使用されているので、使用後は速やかにしっかり真水で洗い流すようにしましょう。塩素が残っている場合、ポリウレタンが塩素の作用を受けてアミノ基の水素が塩素と置換反応を起こしてクロルアミンを生成して分解されてしまいます。(※3-5.参考文献)
3-2. 【注意点②】脱水機を使わず優しく水を絞る
脱水機を使ったり手で力を込めて絞ったりすると、生地を傷めてしまい寿命が縮まってしまいます。糸は引っ張ると切れやすくなるのはイメージしやすいですね。脱水機を使ったり力強く絞ると糸の塊である繊維が毎度強く引っ張られて、繊維が切れるまでの時間が短くなってしまいます。
僕は脱水機がないプールを使うことが多かったですが、手洗いした後何度もしっかり手で絞ってました。寿命が短かった原因はこれかもしれません。
ちなみにプール内で休憩を頻繁にとる方は水着が傷みやすいのも同じ理由です。休息を多くとられる方はあまり壁に寄りかからないようにした方が水着を長持ちさせることができます。
3-3. 【注意点③】陰干しする
乾燥機などで加熱乾燥すると、生地の加水分解が加速されるので必ず自然乾燥させるようにしましょう。80℃の熱水に浸すと数週間程度でもろくなったり、繊維が黄色くなったりすることがあります。熱水に浸すと引っ張り強度が弱くなるそうです。(※3-5.参考文献)
またポリウレタン繊維にとって紫外線は大敵です。直射日光には当てず陰干しするようにしましょう。光が当たることで転移反応(光Fries転移機構)、ポリマーの酸化切断反応が起こるそうです。(※3-5.参考文献)
そういえば以前使っていた水着は黄色い毛玉みたいなものがたくさん出てきてました。温水ジャグジーに長時間晒されていましたし、毎回屋外で乾かして紫外線もしっかり浴びて劣化が激しかったんだと思います。
3-4. 【注意点④】しっかり乾燥させる
しっかり乾燥させることも大事です。乾燥が不十分なまま放置するとカビが付いてしまいます。不衛生なのは勿論ですが、カビも水着にとっては大敵。カビが作り出す酵素でウレタンの加水分解が加速されてしまうそうです。(※3-5.参考文献)
3-5. 参考文献
3-1~3-4項で紹介した専門的内容は下記文献に載っていたものです。ちょっとマニアックですが興味のある方はどうぞ。
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https://www.jstage.jst.go.jp/article/adhesion/40/6/40_6-4/_pdf
www.jstage.jst.go.jp
4. 水泳用水着は正しいお手入れで長持ち可能
水着の寿命は公称100時間とよく言われますが、僕の水着の寿命はたった15時間でした。正しいお手入れをしないと100時間なんて到底持ちません。水泳用水着は消耗品ですが、そうは言ってもある程度は長持ちさせたいところですよね。
水泳用水着の注意点をおさらいします。
- 真水でしっかり濯ぐ
- やさしく水を絞る
- 陰干しする
- しっかり乾燥させる
下記4点に注意してお手入れすれば買い替えスパンはもう少し伸ばせるのではないでしょうか。お財布に優しく楽しい水泳ライフを楽しんでください。