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3つの「湿度」の使い分け方 ~相対湿度、絶対湿度、露点温度~

2021-02-08

湿度と一口に言っても、相対湿度、絶対湿度、露点温度があります。それぞれの意味はもちろん、どのような状況でこれらを使い分けるのかも合わせて解説しました。使い分けについて気になる方は3章から読み進めてみてください。

目次

1.湿度とは

2. 3つの「湿度」
2-1. 相対湿度
2-2 絶対湿度
2-3. 露点温度

3. 3つの「湿度」の使い分け~相対湿度、絶対湿度、露点温度~
3-1. 体感温度なら相対湿度
3-2. 水の物理吸着が関わるときは絶対湿度
3-3. 吸湿分解が関わるときは露点温度

4. 3つの「湿度」の使い分けは正しい現象理解の第一歩

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1. 湿度とは

空気中に含まれる水分量の程度を示す指標。これが湿度の最も簡潔な定義です。

湿度は様々な目的で使用されます。体感温度の指標、設備設計の指針、製造工程の管理指標であったり様々ですが、一括りに「湿度」と表現します。

2. 3つの「湿度」

湿度には大きく分けて3つの尺度が存在します。相対湿度、絶対湿度、露点温度です。

2-1. 相対湿度

1つ目の湿度は相対湿度、俗にいう湿度○○パーセントという指標です。ある温度の空気中に存在できる最大水蒸気量(飽和水蒸気量)を100としたとき、その空気中に実際に存在する水蒸気量を0~100%の百分率で表したものですね。相対湿度は英語表記ではRelative Humidityなので、RH%と表されるのが一般的です。

相対湿度20RH%、80RH%、100RH%のイメージを図にしてみました。良く説明される図ですね。図1の直方体の大きさが法話水蒸気量を示し、青塗部分が各条件で含まれる水蒸気量です。100RH%は飽和水蒸気量を示し、水蒸気がこれ以上存在できない状態を意味します。相対湿度が下がってくると青塗部分が減ってきます。

ある温度の空気における相対湿度20%、80%、100%の状態について、直方体を用いて表したイメージ図。
図1.ある温度の空気における20RH%、80RH%、100RH%のイメージ図。

では次の図2は如何でしょうか。これも同じく相対湿度20RH%、80RH%、100RH%を示した図ですが、図1とは何か大きく違います。

より低い温度の空気における相対湿度20%、80%、100%の状態について、小さい直方体を用いて表したイメージ図。
図2.より低い温度の空気における20RH%、80RH%、100RH%のイメージ図。

図1と図2では直方体の大きさが違いますね。図1は40℃の空気における相対湿度、図2は15℃の空気における相対湿度を表したものです。同じ数字でも意味が全く違うことが分かります。

つまり相対湿度は同じ温度の空気同士を比べた時の相対的な水蒸気量を百分率で表したものです。単に80RH%と言っても図1の状態なのか図2の状態なのか判別できません。相対湿度のみでは1つの状態に特定できないので、温度情報と合わせて表記します。例えば40℃/80RH%などと書きます。

2-2. 絶対湿度

2つ目の湿度は絶対湿度、空気中の単位量あたりに含まれる水分重量を指します。細かく言うと容積絶対湿度、重量絶対湿度に分けられますが、単に絶対湿度というと容積絶対湿度[g/m3]を指すことが一般的です。空調設備などは空気の処理能力単位を揃えるために重量絶対湿度が使われるそうですが、本記事では以降容積絶対湿度のみ取り扱います。

  • 容積絶対湿度[g/m3]…空気の単位体積あたりに含まれる水蒸気重量(水分重量)を言う
  • 重量絶対湿度([g/g], or [g/kg])…乾燥空気の単位重量あたりに含まれる水蒸気重量(水分重量)を言う

相対湿度との大きな違いは、絶対湿度は空気に含まれる水蒸気量が一意に決まるということです。2-1で示した図を改めてみてみましょう。各条件の赤字が絶対湿度です。

40℃、15℃における20RH%、80RH%、100RH%それぞれの絶対湿度を示した図
図3. 40℃、15℃それぞれの空気における20RH%、80RH%、100RH%の絶対湿度

例えば、40℃/20RH%と15℃/80RH%の絶対湿度はともに10g/m3ですね。このように絶対湿度は単位体積の空気中に含まれる水蒸気重量を示しているだけなので、絶対湿度と温度/相対湿度と1対1では対応しません。慣れるまではちょっと混乱するところですね。

2-3. 露点温度

3つ目の湿度は露点温度、単に露点と言ったりもします。湿度という言葉はありませんが、実質的には絶対湿度を代替する指標です。

ある温度の空気について、絶対湿度(単位体積当たりに含まれる水蒸気量)をそのままにして温度を下げた時に結露が始まる温度とも言い換え出来ます。絶対湿度がわかっている空気に対して、絶対湿度と温度からなる飽和水蒸気曲線と交わる個所とも言えます。温度T1・相対湿度X-RH%の空気に対して、その絶対湿度と温度T2・相対湿度100RT%となるときの絶対湿度が等しいときの温度T2を露点、という言い方もできます。

絶対湿度と露点温度は1対1対応の関係です。絶対湿度は比較的高い水蒸気量を表すときに使うのに対して、絶対湿度では差異が見えにくい低い水蒸気量の領域を指すときに露点温度を使うことが多いです。

絶対湿度と露点温度の関係の整数プロットと対数プロット。飽和水蒸気曲線になる。絶対湿度の小さい領域では露点温度を使用した方が分かりやすいことを示している。

例えば洗い場があったり、作業部屋でたくさん人がいる場面を想定します。絶対湿度管理レベルならある程度一定水準を保てますが、露点温度は急上昇してしまいます。そもそも露点温度管理が必要なエリアでは露点がマイナスで維持されていることが多い印象です。

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3. 3つの「湿度」の使い分け~相対湿度、絶対湿度、露点温度~

ここまで来て、同じようなことなのに何で3つも尺度があるの?という疑問が出てくるころではないでしょうか。もちろんそれなりに使い分け方があります。実務を積まないと理解が進みにくいところです。本記事では、筆者が経験的に感じる使い分けの例を紹介します。

3-1. 体感温度なら相対湿度

体感温度と言えば相対湿度です。気温が高いからと言って不快とも限らず、気温が低いからと言ってそれほど寒いと感じない状況もありますね。

体感温度は汗の気化熱が関連しています。汗が蒸発してできる水蒸気を空気中に蒸発させやすいかどうか、つまり水蒸気を受け入れる余力があるかどうかは相対湿度が最も適しています

相対湿度が低い場合、空気はたくさんの水蒸気を受け入れる余力があります。この時は汗が蒸発しやすくなります。気温が高い時は汗が蒸発しやすい為水の気化熱で熱い皮膚は冷やされ涼しく感じます。逆に気温が低い時は気化熱で冷え切った皮膚からさらに熱が奪われやすくなり、寒く感じます。

逆に相対湿度が高い場合、空気は殆ど水蒸気を受け入れることが出来ません。つまり汗が蒸発しにくくなります。気温が高い時はいくら汗をかいても気化熱で皮膚が冷やされにくい為熱く不快に感じます。気温が低い時は冷え切った皮膚からさらに熱を奪われることはないので、寒さを感じにくくなります。

湿度が低い時汗は蒸発しにくく、湿度が高い時汗は蒸発しやすいことを示すイメージ

絶対湿度では汗が蒸発してできる水蒸気の受け入れ余地がどの程度あるかを知ることはできません。体感温度を考える上では相対湿度が最も適しているのです。詳細は割愛しますが、体感温度をより的確に表す指標として、気温から水の蒸発のみでどこまで冷却されるかを示す湿球温度(WBGT:Wet Bulb Blobe Temperature)もありますね。

夏に活躍する扇風機。扇風機の風で気温は下がりませんが体感温度は下がります。相対湿度で汗のメカニズムを考えると分かりやすいですね。

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3-2. 水の物理吸着が関わるときは絶対湿度

物体に対する水の物理吸着が関わっているときは絶対湿度を用いることが多いです。特に素材・材料関連の場合には、絶対湿度で語られますね。

もちろん水の物理吸着の議論に絶対湿度が使われるのは明確な理由があります。例えば、先の相対湿度、絶対湿度の各条件で水蒸気分圧を書いてみるとこんな感じです。水蒸気分圧は理想気体の状態方程式で算出しているので、若干の誤差はありますがご容赦ください。

40℃、15℃における20RH%、80RH%、100RH%それぞれの絶対湿度と水蒸気分圧を示した図。

そう、素材への水の物理吸着は、素材そのものの表面積と空気中の水蒸気分圧の吸着平衡で説明できますよね。絶対湿度は水蒸気分圧なので、絶対湿度で語られます。特に表面積の大きい粉体材料、多孔質材料などでは、一般的に吸湿性と絶対湿度に相関関係がみられます。

ただし絶対湿度で語るにも条件があります。それは水の物理吸着のみが起こっていて、化学吸着が関与していない場合に限ることです。水の物理吸着は可逆平衡なので絶対湿度に応じて材料側の吸湿状態も可逆的に変化します。化学吸着した場合タイムリーに平衡状態が変化するので、絶対湿度では微小な領域をモニタリングしていかないと適切に議論できません。

3-3. 吸湿分解が関わるときは露点温度

水の化学吸着が関わる状況では露点温度での議論が最適です。前項では物理吸着のみが関連している事例を紹介しましたが、素材・材料には、化学吸湿性を有する物質もたくさん知られています。水の化学吸着の場合、吸湿とともに加水分解などの化学反応が生じてしまうので不可逆反応、つまり一旦吸湿してしまうと元に戻りません。

この水の化学吸着を議論する状況で湿度を語るとき、加水分解など水による化学反応が生じないように管理するという文脈になります。微小量の水分を問題とする場合、絶対湿度では単位が大きすぎて適切な議論が煩雑です。

絶対湿度と露点温度の関係の整数プロットと対数プロット。飽和水蒸気曲線になる。絶対湿度の小さい領域では露点温度を使用した方が分かりやすいことを示している。

2-3章でも紹介した図を改めて見てみましょう。微小領域の差が分かりやすいのは絶対湿度よりも露点温度ですね。露点温度がもつこの特性を生かして、吸湿分解が関わるときは露点温度で議論されることが多いです。

4. 3つの「湿度」の使い分けは正しい現象理解の第一歩

3つの「湿度」である、相対湿度、絶対湿度、相対湿度について紹介しました。これらの尺度は状況に応じて適切に使い分けましょう。

筆者は素材畑なので、素材の観点から使い分け事例を紹介しました。おさらいしておきましょう。

  • 体感温度なら相対湿度
  • 水の物理吸着が関わるときは絶対湿度
  • 吸湿による化学的反応が関わるときは露点温度

本来であれば絶対湿度で相関を見るべき内容を相対湿度で見てしまうと、存在する相関などを見逃してしまいます。露点温度で語るべき内容を絶対湿度で語ってしまうと、適切な数値化が困難となり問題を迷宮入りさせてしまう事にもなりかねません。

「湿度」と言ってしまえば単純ですが、これらの基本を正しく理解して状況に応じて適切に使い分けしておきたいところですね。

素材畑を歩んできた筆者、湿度では随分苦労してきました。そんな素材業界を志望した動機についての記事です。技術的内容ではありませんがよろしければ合わせてどうぞ。

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  • この記事を書いた人

素材さん

東大卒を活かせてない経歴の社畜。工場勤務のヒントを綴ります。転職、結婚、資産形成、資格取得、仕事感。共通点ある方のヒントになれば幸いです。 転職1回目で僻地突入、転職2回目で僻地脱出。/30代前半/東大卒(学部・院)→中小→大手JTC→超大手JTC/素材開発エンジニア/既婚/3人兄弟の真ん中

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